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№1024 契約社員の雇い止め

№1024 契約社員の雇い止め
 契約社員であっても立派な雇用だ。通常契約社員というのは期限が1年程度の有期雇用契約とされている。有期で雇用を打ち切ることを最近は雇い止めと呼ばれている。

 有期雇用と言ってもむやみに雇い止めができる訳ではない。雇用契約契約上継続が期待できるような事情がある場合には「解雇権の濫用」が問題になる。例えば、過去に何回も更新されているとか、有期雇用期間が終了すれば大部分が正社員として採用されているとか、採用に当たっていずれは正社員になれると言ったとか、そういう事情は雇用継続に対する「期待権」として斟酌される。

 例えば、試験採用という有期雇用契約がある。3ヶ月、あるいは1年と試用し、その間訓練などもほどこして当該職場に向いているか審査するような場合だ。このような採用は将来正社員として採用することを前提としているので、継続の期待がある。もちろん、「試用」ということだから、通常の正社員とは違っ他事情により解雇ができる。

 このような試用期間中、適正を欠くとして不採用にする場合には、企業防衛の点からはどのような点で適正を欠くか明確にして置く必要がある。企業防衛といういかにお不人情だが、その実践は労働者からしても役立つことになる。

 JALの客室乗務員の試験採用で正社員化しなかった事例がある。この事例では訓練中のミスが積み重なっていた。JALでは社員の評価基準を作っており、成績表を正確にしていた。

 本人は「自分の担当ではないドアモードを変更しようとした」とか、細かくチェックされていた。「一生懸命に努力しているが定着が遅く、知識の行動ができていない」「大変心配である。」とされている。何度か指導を行っているがうまくいっていない。さらに、本人の反省文も繰り返し提出されている。こうした事情から裁判では雇い止めを正当とした(東京地裁H23.10.31、判時2145号121頁)。
 
  実際、中小企業の場合、このようなきめ細かな指導は難しい。もともと人材が必ずしもすぐれているわけでもない。しかし、試験採用とする場合、ある程度のチェックシートなどをつくっておくことは必要かもしれない。それは、本人に対する教育という点でも大切だ。