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№962 撤退の決断

№962 撤退の決断
 顧問先の経営分析を会計士の先生と行っている。特定の事業部門を分析した結果、どうもよろしくない。この会社は新方向としてこの部門を重視して投資を続けてきた。確かに売上げは急激に伸びた。利益率が悪く成果が出ていないのだ。

 中小企業企業の場合、資源が限られており、赤字部門に対して長期に投資を続けることは許されない。この問題を社長をどのようにとらえるべきだろうか。顧問弁護士として何を社長に告げたらよいのだろうか。

 時代の変化を読み切れず特定の部門にこだわり続けることは会社を見殺しにするに等しい。コダックがいい例だ。社長としてはこの部門について利益を生み出す仕組み作り上げるか、とっとと撤退して他の利益を生み出している部門を強化する方がよい。ともかく、「利益」を生み出さなければならない。

 当面する不採算部門の評価はどのようにされるべきだろうか。
① 不採算部門は顧客に支持されているだろうか。「効率」を高め、生産性をあげれば利益を生み出すことができるだろうか。この部門は生産性を図る指標を持っているか。
② 不採算部門は将来的に顧客の支持を得ることができるか。将来の利益を確保するために投下できる経営資源はどれだけか。それはいつプランニングのまで続くのか。

③ 採算部門はなぜ顧客に支持されているのか。将来的に発展の余地はないのか。
④ 採算部門が衰退した場合の企業のリスクは何か。
⑤ 採算部門、不採算部門も含めて企業全体の将来像とそこに至る戦略は何か。

 こうした問題について、私の敬愛するドラッカー先生はいくつか重要提起を示唆する。
【過去との決別】
★ 不採算部門との決別については非常にきびしく指摘している。
 「プランニングの原点は自社の目標である。各目標分やにおいて、『将来、目標を達成するためには、今何をなすべきか』という問いと向かい合う必要がある。将来を自分たちのものにするために、まずなすべきは、過去との決別である。」

 「プランニングの第一歩は、あらゆる活動、製品、業務プロセス、市場について『これまで関わっていなかったなら、新たに乗り出すだろうか』と自問することである。答えが『ノー』なら、『早く決別するにはどうすればよいか』を考えなくてはならない。」

【事業の変革】
★ 事業を維持するためには事業変革は必要不可欠だ。その心構えについても述べている。
「マネージャーは絶えず既存事業の運営に携わらなければならない。勝手の分かった既存事業をマネジメントし、改善を加えるのと並行して、新規事業をも手がける必要がある。実勢の思わしくない分野、あるいは悪化傾向にある分野から、好調ないし右肩上がりの分野へと、経営資源を分配し直すのだ。過去からの脱皮を少しずつ図り、慣れ親しんだ旧来事業のしがらみを断ち切るとともに、明日を切り開かなくてはならない。」

 ドラッカーは事業の革新について次のように言う。
「企業が新規事業を開拓するとは、厳密には、現行の事業をとおして将来への備えを進め、新しい事業への脱皮を図る態勢を整える、という意味である。既存事業、とりわけ成果のあがっている事業をつづけながら、将来の繁栄への礎を作るのが、新規事業を開拓する本旨である。」