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№944 円高倒産、あきらめないで

№944 円高倒産、あきらめないで
 リーマンショック以降の不況に加えて異常な円高が中小企業を襲っている。
 昨日もある機械部品関係の業者の相談を受けた。

 円高のために製品の価格が上がっており、輸出が激減している。リーマンショック以降の不況を持ちこたえた企業も円高による輸出不振が覆いかぶさって耐えられない企業があいついでいる。今回の相談も借金が支払えないという。負債のことを考えると夜も眠れないという。自分や家族はこの先どうなるだろうと思い悩んでいる。

 この企業はリーマンショック以降耐えて、銀行負債の支払いを続けてきた。リーマンショック直後、体力のない企業はあっという間に潰れていった。社内の経理がいいかげんで、預金のみで経営を管理し、出たとこ勝負のように借金をし、ある時払いのように借金を返済をしてきた企業は滅んでいった。あのショックを乗り切った企業はそれなりに体力、能力のある会社だ。

 相談の中で私たちはいくつかの分析を行った。
① 不況、円高の中でも一定の取引量があるのはなぜか。この取引量は手堅い顧客か。それとも円高とともに滅んでいく取引先なのか。
② 銀行融資が経営にどのくらい負担になっているか。借金を支払わなければ経営を維持できるのか、利息程度は支払えるのか、一部の元金は支払えるのか。キャッシュフローを正確にしてぎりぎりの調整を行う。
③ 現在、会社の財産はどれほど残っているのか。保険による積み立てはないか、不動産はどうなっているのか。これらの費用を新たな事業のために使用できるのか。
④ 社長の考える事業展開の方向は何か。攻めてはあるのか。

 この会社は円高による急激な輸出量の減少によって苦境に立たされた。しかし、手堅い顧客が存在する。万一、銀行の負債が支払えないとしても保証協会に債務が移行するのみにでこの世の終わりではない。いろいろな諸要素を検討すれば、まだ大丈夫であることが分かった。しばらくは、リスケでしのぎ、会社に残っている財産を企業提携によるあらたな事業展開に使うことにした。

 こんなことは相談しなくても社長は分かっていたかもしれない。社長のつらいのは乗り切れないことではなく、乗り切れないかもしれないという先の見えないことの不安がつらいのだ。この場合の私の任務は行き先の見えるよう事業戦略を整理することにある。