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№767 天使のスィーツ

№767 天使のスィーツ
 「エンゼルスィーツ」は「天使のスィーツ」とは類似の商品を指していると言えるだろうか。

 森永製菓がタカラフーズ相手に、「天使のスィーツ」は紛らわしいから商標は無効だと審判を申し立てた。特許庁は請求不成立審決を行い、森永の請求は認めなかった。タカラフーズは「天使のスィーツ」の商標を使用してよろしいということになった。

 森永製菓は類似商標だからというので特許の判断を裁判で争った。結果は森永製菓が勝訴した(知的財産高裁H21.7.2、判時2055号130頁)。商標法4条1項1号に違反するという。

 2つの商標は外観、呼称も異なる。
 「天使の」は日本語で漢字だし、「エンゼル」は英語でカタカナだ。
 「てんしの」と「えんぜる」とは呼び方は違う。

 しかし、「観念」が同じだと、類似商標となってしまう。

 これは難しい。つまり、「取引者(=消費者)に与える印象、記憶、連想を総合して全体的に考察」して、商品の出所に誤認混同を生じるおそれがあれば、類似としている(最3S.43.2.27、判時516号36頁)。

 本件の場合、「エンゼルスィーツ」では、「エンゼル」が特別だ。この呼称からは「天使のような甘い菓子」という観念が生じる。

 一方で、「天使のスィーツ」も「天使のような甘い菓子」という観念が生じる。だから、類似しているというのだ。

 一方は英語、一方は日本語という違いはあるが、英語教育が進んでいる現状では通常「天使のような」という意味にとるという。

 この外にもマダム・Madam、真珠・パール、月光・moon-lightが類似したという事例がある。

 森永製菓にとって「エンゼル」というのは特別な意味がある。エンゼルと名のつく菓子はみんな森永の菓子かなと思ってしまうほどだ。こうした、「エンゼル=森永」の関係を守るために森永は徹底的に争うということだろう。そして、このような事例も見逃さず裁判を仕掛けているということだ。

 中小企業のみなさま。あなたのイメージ作りに対する姿勢は甘くはないだろうか。