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№756 取引先の倒産

№756 取引先の倒産
 取引先が倒産して数千万円の焦げ付きが出たという相談が急きょ舞い込んできた。
 会社には代理人がついて、弁護士から「申し訳ありませんが、破産手続きを進めることになりました。」となっている。

 倒産会社の場合、債権者としては、一刻も早く現物を確保することが第一だ。自社の納入した商品、倒産会社に残っている財産などその場の気合いで取り戻すということが必要となるだろう。

 残念ながら「倒産」という事態の前では、個別の債権者が保護されるということはほとんど無い。破産法などの法律は全債権者のために財産が保全されるしくみになっている。

 この社長の場合、倒産の危機が生じて、直ちに現場に行き、いろいろ調査していった。さすがにすごい執念で、倒産会社が財産を隠匿している事実や隠匿場所まで見つけ出したのだ。この倒産会社は深夜密かに多額の財産を運び出し、社員や親族、その他の個人宅に分散して隠匿していた。

 財産の隠匿行為については、破産など倒産手続きの中でも最も悪質ととらえられる行為だ。破産法に触れることはもちろん、強制執行免脱罪などの刑法犯になる可能性がある。もし、弁護士が関与していたとなれば弁護士の資格に関わる問題になる。

 問題は、この貴重な情報をどうやって自社の利益に利用するかという点になる。
 せっかく、財産を取り戻しても、自分にまわってこなければ、くたびれ損になってしまう。しかし、残念ながら法的手続きを利用した場合にはどうしても「全債権者」のために財産は使われることになる。

 こうした説明は依頼者にとってはさぞかし不満だろう。弁護士は役立たない、ヤクザを入れた方がよっぽど得だということになる。私はそう思うかどうかその会社の資質の問題ではないかと思う。

 もちろん、倒産直後は実力行使がものを言う。隠匿財産に対して自社の商品を取り戻す行為はある程度許される領域がある。

 また、刑事告発することは有益だ。会社が倒産した以上、会社の責任追及は難しい。しかし、刑事告発によって、社長個人の免責を阻止したりする可能性はある。また、民間では到底分からないような調査が入るため、財産隠匿の全容が分かる。その場合には、平取締役や監査役の個人責任も追及できる余地が出てくる。