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№666 いつのまにか債務が積もる

№666 いつのまにか債務が積もる
 製造業でも、流通関係でも年商3億円、債務額が2億円、毎月の返済が利息も含めて300万円ぐらいという感じの会社はたくさんあるだろう。
 
 毎月、毎月、きちんと借金が引き落とせるか社長は心配で仕方がない。社長は脳天気に構えていても、会計を担当するお母さんは夜も眠れない、なんてことが続くがある。
 
 いったいどうしてこんなことになったのだろう。うちは帳簿もちゃんと付けている。決して会計が甘かった訳ではないと思ったする。しかし、それは外部環境の影響が直撃され、対応が遅れた状態が反映していることが多い。
 
 つまり、毎月少しずつ足りない状態が続くのだが、商売の常として次の月はうまくいくかもしれないと期待しながら事業を継続することになる。少々の赤字でびくついていたのでは商売はできない。
 
 しかし、業績は中々回復することはない。そうこうするうちに、いよいよ貯金が底をついてくる。そこで、銀行と協議して借入を起こすことになる。一時的に数千万円のお金がとりあえず入ってきて、7ヶ月から8ヶ月もつことになる。もちろん、いろいろな返済に宛てるだろう。しかし、借金は増えている。その繰り返しだ。「いつのまにか」といのは数年来の事業上の赤字が解決されずにたまっている状態だ。
 
 本当なら、債務が膨らむまでに対応する。しかし、外部環境の変化はそう簡単に読めるものではない。経営者は自分に言い聞かせることだろう。「今ある事業をどうにかしなければならないから借金はしょうがいないじゃないか。」と。
 
 瀬戸際に立たされた経営者は事業の根本的な解決が必要になる。その決断も経営者の役目だ。その根本は「事業の火は絶対に消さない。」だ。事業は存続する限り社会に役立つ。存在価値はある。それは顧客がいるからだ。顧客はあなたの会社を必要だと思うからあなたにお金を支払う。事業の存続は社会にも、家族にも、自分にも役立つ。だから、いろいろ血を流してでも経営者は事業にしがみつかなければならないし、その価値はある。
 
■ その判断の順序は次の通りだ。
 ① 自分の事業のうちで大切にしてきたものは何か。これなら確実に利益を上げられる事業は何か。
 ② この事業はいったいいくらの売上を確保できるのか。
 ③ その売上を確保するために必要な経費の内訳は何か。つまり事業のサイズは何か。
 
■ こうして、新事業のスケールが決まると債務に対応することになる。
 債務は当然、新事業のスケールを超えていることがある。このときの選択肢は次の通りだ。
 ① 債務の返済期間を15年から20年とした場合に月当たりの返済額で新事業の維持は可能か。これは、15年間の間に銀行からの借り入れを繰り返すことになるが、紆余曲折はあろうが、15年間で返済しきると考えるのである。
 ② しかし、これは銀行が受け付けないかもしれない。そもそも、15年ぐらいの分割では到底返済できるものではないかもしれない。そのときには、新事業の分離を構想することになる。もちろん、事業分離は最後の最後だから、あくまで準備を念頭にいれるにとどめることになる。
 
■ 事業の分離には法的手段は不可欠だ。会社のスケールにもよるが、前記レベルの会社であれば、300万円から800万円ぐらい必要になると思わなければならない。このときの法的手段は次のものがある。
 ① 破産。破産も実は事業生き残りに使える。
 ② 民事再生。これを利用して事業の生き残りを図るのは実は非常に難しい。上記レベルの会社では使わない方が良い。
 ③ 会社分割。これも比較的使いやすい。
 ④ 事業譲渡。これは一番お手軽だ。上記レベルの小さな会社の場合はわざわざ、難しい手続きをしない方がいいかもしれない。
 ⑤ 何もしないで借金を払わず、居直る。このときには支払いの順序をきちんと決めなければならない。