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№377 農業の多面的機能

№377 農業の多面的機能
 最近、私の事務所はある専業農家の依頼を受けて、都市における農業経営のあり方を研究することになった。

 愛知県では来年に生物多様性条約締結国会議が開催されるということで、愛知県や名古屋市もいろいろ工夫しているようだ。

 生物の多様性というのは何もたくさんの種類があるということではない。その地域に昔からある生物種が昔通りにあるという意味だ。小川には小川の生態系があり、里山には里山の生態系がある。

 その点で注目されているのが農業だ。日本では長い長い水田の歴史がある。稲作のサイクルに併せて生物のサイクルもできあがっているのは本当に驚くべき事だ。たとえば、蛙は水田に水を張っているときに産卵する。

 稲だって生物だから、外の生物の生態と合わせていかなければ生きていけない。生物が稲作のサイクルに合わせているというよりは、稲作のサイクルも生態系全体のサイクルと変わらなかったというべきか。
  
 農業、とりわけ稲作が生物の多様性と結びついているのは何か宿命的なもののように思われる。戦後の日本の農業は農薬を使用し、ほ場整備を行った。これは水田を生産道具としてしか見ない思想だった。その結果、水田から生物がいなくった。水田のもつ「自然」、「スローな時間」、「豊かさ」は極端に失われている。

 わが国の農業のあり方については農業基本法が定めていた。同法は平成11年7月に改正され,新たに「食料・農業・農村基本法」が制定された。「農業基本法」が,農業の発展と農業者の地位向上を目指したのに対し,新たな基本法は,食料の安定供給とともに農業の持つ多面的機能の発揮,農業・農村の持続的な発展に力点を置いている。

 農業の多面的機能とは「国土の保全,水源のかん養,自然環境の保全,良好な景観の形成,文化の伝承等農村で農業生産活動が行われることにより生ずる食料その他の農産物の供給の機能以外の多面にわたる機能」を言う(法3条)。

 法律は一定の理想は持っているが、現実は簡単ではない。