№1577 中国的シリコンバレー「中関村」
もともと,この土地は中国王朝の宦官の墓などがあったらしい。また宦官老後を過ごした村でもあったようだ。中国では宦官を「中官zhongguan」と呼ばれ,この地は「中官屯」とも呼ばれていた。
1953年になって,この地に中国科学院が建設されおり,「中官」の村では具合が悪いというので,院長が同じ発音の「中関」の名前を用いたということのようだ。宦官じゃあだめだったようだ。
ともかく,改革開放後はこの地は中国の科学技術の発展の縮図のようになっている。中国政府はこの地を特別区に指定し,インターネット環境の整備を始め,場所の提供,金融の提供など,若い企業家達が生存できる「創業生態連」を作り上げている。これは企業家達が相互に連鎖を作り,系を作り創業的文化を作り上げるというコンセプトだ。
実際,ハーバード大学などで学んだ秀才達が次から次へと起業し大きくなっている。たとえば,ある新聞記事によると,「中関村」従業員の平均年齢は33歳で,そのうち29歳以下は46.5%あるという。ハーバード大学で学んだ高さんという女性は21歳で起業し,世界発の技術を開発したそうだ。ボードメンバーはほとんど20代前半というから驚きだ。
特に注目に値することは「天使投資」という言葉があることだ。これはビジネスエンジェルのことで,ベンチャー企業に対して投資するファンド,企業家のことだ。「中関村」では多くの先陣企業が大きくなっており市場を既に開拓している。さらにこうした企業が若いベンチャーに対して投資しているというのだ。
こうした投資は日本ではまだまだだ。中国の場合「天使投資」があるというのは,中国政府がシリコンバレーの発展の歴史的教訓に学んで,中国でも一大IT産業を興していこうという強い意欲の表れのような気がする。
実際,シリコンバレーの発展の歴史を見ると,企業の集中もさることながら,若くて優秀で野心的な企業家が相互に交流し,情報を蓄積している点の重要性が強調されている。そして,エンジェル投資が新しい企業を育て,地域全体が活性化していくという教訓が見て取れる。
なお,「中関村」は日本の秋葉原のようなところもあって,アニメやゲームのディープな世界も広がっているということだから,この点も面白いと言えば面白い。