№1239 弁護士の交渉術 2
中小企業法務の中で取引先との交渉をどのように進めていくかという相談を受けることがある。もちろん日常的な業務は事業者の範疇だから弁護士は及ばない。しかし、取引先との関係で大きな節目になるような課題については弁護士マターの問題となる。
相手が大きな企業で、こちらが強く依存している場合、どうしてもこちらの立場は弱くなる。中には相手企業の一部のようになってしまって、社長は工場長程度の役割の位置づけしかないような場合もある。このような従属関係がひとたびできてしまうと中々その脱却は難しい。
しかし、長期継続する契約関係では何らかの原因で取引先との継続取引に大きな変更があることがある。例えば、こちら側が経営的に追い詰められて、死ぬ覚悟、事業を打ち切られることを覚悟して発注方法、値段決定方法の変更を申し出るような場合がそうだ。
今まで従順だった「子」会社がいきなり牙をむくので「親」会社としても動転してしまう。実際には「親」会社も「子」会社に深く依存しているので、契約を打ち切られたらたちどころにピンチに陥るのだ。私の経験ではこうした「懐にドス」を持って臨む交渉は意外とうまくいく。
あるいは、取引先に公正取引委員会や労働基準局が入り、それまでの取引形態では立ち行かない時もある。そんな時も「子」会社としてはチャンスだ。いままでさんざん原価の引き下げを求められてきたが、ここで一気に違った対応する機会にめぐまれる。
こうした局面での交渉では、社長、幹部、弁護士などがまじって協議することが有効だ。少なくとも私の事務所の場合は有効だ。交渉相手の弱点を分析して、その弱点をどこまで利用できるかを推し量ることになる。
例えば、価格交渉する場合、最悪交渉が決裂するかも知れない。その時に備える必要もある。また、相手との価格交渉では当然相手は譲歩してくるのだが、相手の譲歩を十分引き出し、相手が伸びきっているか考える必要もある。