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№1240 「自然の権利」

№1240 「自然の権利」
 私の事務所では自然保護活動を進めている。法律事務所なので、普通の自然保護活動とは少し違い、環境保護団体に法的なアドバイスをしたり、自然保護のための裁判をしたりしている。法律事務所としての社会貢献の一つだ。

 その一つ。当事務所は「自然の権利」という考えを日本社会にアピールしたということでその道では非常に有名になっている。自然にも権利があってもいいじゃないかというのがそのコンセプトだが、ついでに「アマミノクロウサギ」という奄美大島絶滅危惧種を原告にして裁判してしまった。

 思えば、15年ぐらい昔の話だ。
 当時、トトロとか、ナウシカとか、宮崎駿の作品が次から次に打ち出され、社会全体が自然と人間との関係がとうあるべきだろうかという機運が高まっていたように思う。メダカも絶滅危惧種になってしまったというと、もう人間はやり過ぎてないかという考えが世の中にあったように思う。

 そんな中で「自然の権利」という主張をかかげて、ウサギを原告に提訴するという訳のわからないセンセーショナルな裁判が提訴されたのだから、当時、ある意味、狙い澄まして投下された爆弾のような効果があった。

 朝日新聞は社史始まって以来の紙面を使い、NHKクローズアップ現代でとりあげた。日経新聞には私達の裁判を応援するような内容の全面広告記事が掲載され、なんやかんやと騒がれた。

 確かにおもしろい裁判だったなと思う。ウサギが法廷にやってきて証言するのかとか、ウサギの報酬はドングリかとか、委任状にはウサギの前足をハンコにするのかとか、いろいろな言われ方をしたものだ。

 「自然の権利」というのはアメリカで始まった思想で、エコロジーの思想に深く根ざしている。エコロジーというのはエコ、もとは家の意味だが、生態系が一つの家の中でつながっているというような意味が込められている。地球は人間だけのものではない。宇宙船地球号の乗組員の一人でしかない。一つの地球の中で、生き物全てが尊重されなければならないというのがエコロジーの思想だ。

 自然の権利はもの言わぬ自然が、開発などで生息地を奪われ、絶命の危機にさらされることに対して、自然の立場にたって、自然を代弁しようという試みを言う。
 ウサギが人間に向かって、「私たちにも権利があっていいじゃないですか。」と叫ぶ世界があってもいいじゃないですか。