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№784 乾燥装置の発火と製造者の責任

№784 乾燥装置の発火と製造者の責任
 機械を製造販売する企業は中小企業にも多い。メーカーとしては製造物責任法への対策も必要だ。

 本件は循環式乾燥装置が発火したとして、それを製造販売する企業が訴えられた事例である。本件では火災により、トランス製造工場が全焼した。

 トランス製造会社は乾燥装置製造業者に対して、1億5831万1279円を請求した。判決は被告に対して4562万6007円の支払いを命じている(東京地裁H.21.8.7、判タ225頁)。

 本件ではトランス製造工程で製品を乾燥させる必要があった。鉄心に電線を巻いた後にワニスをと含浸させ、それをトロッコに乗せた状態で、本件循環式乾燥装置内に移動し、熱風で乾燥させるという仕組みになっていた。

 製品からは余分なワニスが滴り落ち、それをノーメックスペーパーという紙で受けていた。ワニスが含有する可燃物の発火点は約400度、ノーメックスペーパーは約220度だった。これだけなら、けっこう燃えやすいという印象を受ける。そのため、可能装置は必ず、これらより低い温度が保たれるよう設計され、作動しなければならない。

 判決は、乾燥装置内部が設定温度を超えて高温となり、ノーメックスペーパーもしくはワニスが発火して生じたと認定した。そして、温度調節が機能しなかった点、乾燥装置に「欠陥」があるとして、製造物責任法3条に基づいて被告の責任を認めた。

 製造物責任法にいう欠陥とは「通常有するべき安全性」が欠如する場合を言う(法2条)。本件では発火するような機械は通常備えるべき安全性に欠けるというのである。

 もっとも、本件では一方でワニスが滴り落ちる状態で製品を通過させたり、日常的な点検を起こったりするという問題点はある。そのため、整備不良の場合まで「欠陥」と呼んで良いかは問題があるが、判決では過失相殺によって公平をはかった。つまり、被害者にも落ち度があったのだから1億5000万円も認める訳にはいかないというということになる。

 さて、製造物責任対策は何か。
 ① 当該製品が設置される場所の具体的状況をよく把握し危険性を除去すること。
 ② 販売に際して、危険な部分について必要な説明を行い、了解を取り付けておくこと。
 ③ 機械の利用方法、日々の点検方法などマニュアルを充実させること。
 などがあげられるだろう。