№250 バラが咲いた.
我が家には猫の額ほどの庭があって,妻がいろいろな植物を植えている。自宅を新築したときには土が悪かったのか,せっかく植えた木が枯れ始めたりして殺風景な庭だった。このごろは木の根も張ってきて,小さいながらも庭としての風格を備えてきた気がする。
スイセンから始まり,チューリップ,オダマキ,三色スミレといろいろな花が順番に咲いている。我が家では雑草もメンバーになっていて,タンポポやカタバミも一部だ。夏になればツユクサの青い花が咲くだろう。元気の無かったアセビもかんざしのようなピンクの花を咲かせてがんばっていた。最近ではエゴノキの真っ白な花が満開になり,今はアジサイのつぼみがふくらみ始めている。
そんな中,どうしても咲かなかった花がある。それが私が買ってきたツルバラだ。ホームセンターで鉢植えを見つけていいんじゃないかと思って買ってきた。庭に移し替えて,徐々に伸びてきたがなかなか咲かない。猫の額では日照もままならず,よくぞ枯れなかったというべきか。しかし,今年は違っていた。木の勢いが誰の目にも明らかだった。ツル状の枝が次から次に伸びてきて,きっと咲くだろういう予感に溢れていた。
「今年は咲くかも知れないわね」
「ああ,つぼみがたくさんだ。」
4月も半ばになり,黄色の花が次から次と咲き始めた。籠橋さんちの小さな門の一角にたくさんの黄色い花が咲いた。
「やっと,咲いたわね。こんなにたくさん。」
「わたしも,赤いバラを買ってきたわ。ここに植えれば,半分が黄色のバラで,半分が赤いバラなるかもしれないわ。」
もちろん,こどもたちは庭には無関心だ。自分たちがいつのまにか大きくなっているのと同じように無関心だ。