№991 サプライチェーン経営
これはサプライチェーン経営を簡単に紹介しており、通勤途上でも読めるようになっているが、すぐれた本だ。
「サプライチェーンとは、単なる供給(サプライ)業務の連鎖(チェーン)である。資材の調達、、加工、組み立て、物流、販売といった供給業務の連鎖をうまくつなぎ、販売を含むチェーン全体の業務のスピードを上げるには、マーケッティングや組織論を含んだコンセプトとして、サプライチェーン経営を定義する必要がある。」
本書の問題意識は「チェーン全体の業務のスピードを上げる」というところにある。ITや物流の発達によって、市場はめまぐるしいスピードで変化している。市場の要求にあわせて即座に対応する生産体制が求められている。
もちろん、苛烈なコスト競争下では生産コストの削減は至上命題となっている。市場の要求に対する対応、(機会損失の防止)とコスト削減の要求との最善の調和点は何か、その改善と前進を図るイノベーションとは何かというのが本書の問題意識である。
こうした「業務のスピードをあげる」という点では生産ラインの作業効率を上昇させて作業員や生産ラインの生産性をあげていくという作業が必要だろう。しかし、それだけでは足りない。部分的な効率の上昇は、サプライチェーン全体からみると非効率となる。
一箇所、非常に効率よく生産したとしても、その箇所には過剰な仕掛かり在庫がたまってしまう。それは過剰な仕入であったり、在庫の陳腐化(時間とともに価値が減少する)であったり、作業そのものをもっと分散させるべきところをしなかったりした結果だったりする。
そこで、重要となるのは「同期化」「熟練」という言葉だ。
つまり、サプライチェーンの部分部分が常に全体を意識して、調和を図りつつ生産を図っていく必要がある。部分部分は頭脳を持ち、全体としてどの程度の生産スピードが求められているかを理解して行動することが必要だというのである。この同期化、調和はあたかもサプライチェーンが一つの生き物であるように動けと言うことになる。
情報が共有化され、繰り返し繰り返し、「学習」「改善」されることで「熟練」に達し、目標達成のための全体の調和が実現する。