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№2322 相反する両極端の統一

№2322 相反する両極端の統一

1. 両極端の使い分け
  稲盛哲学の基本的原理の一つに,相反する両極端を併せ持ち局面によって使い分けるという考え方がある。稲盛氏はしばしばアメリカの作家,スコット・F・フィッツジェラルドの言葉,「一流の知性とは,二つの相対立する考えを同時に心に抱きながら,しかも正常に機能し続けられる能力である」を引用している。そして,時に両極端の中で判断することをアウフヘーベン(止揚)という言葉を使って説明することがある。

  私が学生のころ,大学内で時々この言葉が使われた。これは「ドイツの哲学者であるヘーゲル弁証法の中で提唱した概念。」「ドイツ語「Aufheben」の訳語」。次の二つの意味を含んでいるという(Wikiより)。
 ① あるものをそのものとしては否定するが、契機として保存し、より高い段階で生かすこと。
 ② 矛盾する諸要素を、対立と闘争の過程を通じて発展的に統一すること。

3. 物事が発展する時,矛盾した状態が葛藤して新しいものが生み出されていく
  ヘーゲルの哲学はマルクス主義にも取り入れられ,「否定の否定」というような言葉で表現されたりしている。ものごとが発展する時,それと相反する現象が起き,やがて統一されて新しいものが生み出される。こういう考えは昔からあって,ギリシャ時代にはソクラテスやプラントもこんな発想を持っていたらしい。

4. 弁証法的発想の重要性
  私たちはいつもどちらか一つだという発想にとらわれやすい。両極端の状態をあわせ持つことの方が大切だという発想はなかなかない。選ばなくてもいいという稲盛氏の考えは私にはほっとしたものを与えてくれる。

  例えば,西郷と大久保,情と理の相反する発想のどちらも大切で明治維新が成し遂げられたという。会社でも情による経営,理による経営どちらが正しいのではなく両方とも必要だという。情と理,両極端の状態をあわせもち正しく判断する知性こそが最高だという(盛和塾22号)。

  「つまり,一つの人格の中に,相反する両極端をあわせ持ち,局面によって正常に使い分けられるのが,バランスのとれた経営者なのです。」

5. 株式会社オプテックス社長の悩み
  社長の社内統制のあり方に対する問いに次のように答えている(盛和塾19号)。

  「トップが強い力でもって会社を導く手法と,社員の個性や自主性を尊重して自由にやらせる手法と,どちらが正しいのかと聞かれましたが,どちらも正しいのです。つまり,2つの矛盾する両極端の考え方を同時に同一人があわせ持ち,それを正常に機能させる能力を持っている人が現在における最高の知性なのです。・・・まかしてまかさずなんです。」

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