№2304 社員に愛されたい,感謝されたい
社員に愛されたいという考え
稲盛経営哲学の勉強に集中しているが,自分に足りないものは何だったのだろうといつも考えさせられる。私の場合,最大の課題は「社員に感謝されたい」という気持を意識的に消してきたところにあったのではないかと考えるようになっている。
私は「個人の多様性を尊重し,価値を押しつけてはいけない」とか考えて,人に対する影響を与えることに抑制的だった。理性を度外視して人に心酔することは危ないことだという警戒感みたいなものもある。人に感謝されない時の心の傷を避けていたかもしれない。
「愛」の重要性
しかし,稲盛経営哲学を勉強してそれは間違いではないかと考えるようになってきた。経営者はもっと「感謝されたい」「愛されたい」と思ってもいいのではないだろうか。むしろ思わねばならないのではないだろうか。
JAL意識改革
稲盛経営学の神髄は「全社員の物心両面の幸せを追求する」にある。稲盛氏がJALの再建にあたって重視したのは意識改革だった。2010年2月稲盛氏はJAL会長に就任し,6月1日から7月7日まで,17回,週4回のペースでJAL幹部52人が集まりリーダー教育が実施された。その後にJALフィロソフィの策定に入っている(盛和塾118号)。
JALの理念
JALフィロソフィ手帳では企業理念を次の通りだ。
さらに目次は次の2つに分かれる
第1部 すばらしい人生を送るために
第2部 すばらしいJALとなるために
JAL理念が社員に与えた影響
一度倒産した企業であるにもかかわらず,稲盛会長は「社員の幸せ」を譲れない理念としてかかげた。当時の社員からすれば驚きだったに違いない。会社が社員を大事にしてくれるという信頼感が,安心してJALが好きだ,JALとともに生きていこうという考えを起こさせたことだろう。
一人ひとりが主人公の経営
第1部の目次をみると素晴らしい人生を送るために「人間として正しいかで判断する」とあり,個人が主体的に正しさを判断することが必要だとしている。その一方で第2部の目次を見る「一人ひとりがJAL」「本音でぶつかれ」となっている。建前論に終わらない本音の議論をJALのためにするそれが,会社の利益になるという考え方だ。
「フィロソフィが社員一人ひとりの中にあった蓋を外してくれました。人として何が正しいかという考え方にもとに実践していいと言われた瞬間,今までやろうと思ってもやれなかったことができるようになりました。フィロソフィによって解放されたことが,社員の自主的な活動につながっています。」(盛和塾118号,126頁)
社員に対する「愛」なくして理想論は展開できない
社長はマネジメントを担う。社員の幸せを願い,社員らが仕事を通じて自分らしさが表現されるよう組織を組立て,運営していく。社員は仕事を通じて,自分の人生を歩み,自分の本当の姿を見つけ出していくことだろう。社員に対する強い「愛」なくして社員が会社を愛し,仮面を脱ぎ捨て本音を語ることはない。このマネジメントには社員を愛し,社員に愛されたいという強い思いがある。
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