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№2302 技術の保全と競業避止義務

№2302 技術の保全と競業避止義務

社員退職に伴う技術漏出を防止するために競業避止義務を利用します
 従業員や役員が会社退職に併せて技術が盗み出されてしまうことを防止するために私たちは社員らに競業避止義務,同業に就労することを禁じる条項を課すことがある。本来職業選択の自由憲法上保障されているので,競業避止義務が法的に有効とされるためには一定の工夫が必要である。

業務提携,生産委託する場合でも競業避止義務を利用します
 企業同士が業務提携したり,技術提携したりする場合の技術もやはり競業避止義務を利用することがある。東京地裁判決(H.22.9.15.判タ1346号175頁)は基本取引約款上競業避止義務を付した条項を有効として,製造活動などの禁止じる判決を出した。

競業避止義務に基づく差止め判決主文

判決主文
1. 被告は,別紙製品目録記載の製品及び類似製品の営業,製造及び販売をしてはならない。
2. 被告は,原告に対し,別紙資料目録記載の図面,技術資料等を引き渡せ。

事案の概要
 この事件では被告が半導体容器洗浄装置を製造して原告に販売するという継続的取引契約が締結されていた。これは原告が開発した特殊な技術によって製造されたもので,開発設計費は原告が負担している。原告はこの技術にかかる図面を被告に渡し,被告に本装置を製造させていた。

重要な契約条項
契約書には次の条項が存在する。
「16条 被告は本製品及び類似した製品を第三者のために製造又は販売してはならず,これを意図した販売活動,広告宣伝活動及び各種媒体への露出は,原告の書面による要請又は許諾があった場合以外は行ってはならない。」

 このような条項があったにもかかわらず,被告は類似の製品の製造を行い,原告の顧客に売り込みを図っている。しかも,この時,被告は原告の従業員を引き抜き,技術と顧客を盗んでいる。

 事案としてはかなり悪質であるが,もし,この16条がなかければ原告が勝っていたという保障はない。というのは原告は不正競争防止法を利用するほかはないが,同法による差止めは容易ではない。

受注拒絶行為に対しても賠償を認めた
 結局,技術を盗んだ被告は敗訴することとなる。さらに,本判決では被告に基本契約継続中の受注義務を認めた。当事者間の紛争以降,被告は個別契約の発注を受けたが受注していなかったようで,受注をもらいながら拒絶した事例については賠償義務4243万6556円は賠償を認めた。その内訳は被告が引き受けないために他に割高で外注に出さざる得なくなった割高分が損害となった。

契約書には次の条項が存在し,これが意味をもった
「22条 被告は,本製品の原告への供給が不可能となった場合には,原告自身又は第三者に対する委託による製品の製造を可能とするため,原告の要求に基づき,技術資料,図面等の提供及び返却,その他あらゆる技術援助を原告に対して行うこととする」
その他の重要な判断
 また,将来得たかもしれない利益10億円が請求されたがこれは認められなかった。
 この事件では,契約終了時期については,終了3ヶ月前に通知することになっていたため,直ちに終了を認めなかった。だた,翌年の更新は拒絶する意味はあるとしている。

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