№2300 万有引力
チコちゃんに叱られるという人気番組がある。
「なぜジャンプしても地面に戻ってくるの? 」という質問。答えは「時空のゆがみにひっぱられるから」。しかし,「地面に戻ってくるの?」という問いは,「何で地面に引っ張られるの?」という質問と同じだ。「時空のゆがみに引っ張られる」という答えは,「なんで引っ張られるの?」って聞いて,「それは引っ張られるからだよ。」と答えているようなものだ。
ともかく,引力は偉大だ
ああややこしい。これだから弁護士はきらいだという声が聞こえてきそうだ。
ともかく,引力は偉大だ。限りなく強い重力を持つブラックホールってなんだろう。どんな遠くまでも重力は及び,太陽系も銀河がもってる重力の渦にまきこまれる。その銀河も無数の銀河群が重力の作用で泡のような構造になっているそうだ。
私の大好きな宮沢賢治も重力が大好きだった
空から降ってくる雨粒を「十力の金剛石」とよび,
「その十力の金剛石こそは露つゆでした。」その露は生きとし生けるもの,輝く風景,「すべてすべて十力の金剛石でした。」と言っている。
虔十公園林では,亡くなった虔十が残した林を見て,「あゝ全くたれがかしこくたれが賢くないかはわかりません。たゞどこまでも十力の作用は不思議です。」と言っている。
賢治が重力に特別な意味を込めていたことはまちがいない。
「吾輩は猫である」にも出てくるぞ
夏目漱石,吾輩は猫であるの準主人公,珍野苦沙弥先生はこんな短編を書いている。先生はおおまじめだが,迷亭にはからかわれ,猫には冷ややか扱われている。味も素っ気も無い散文で、ここまでそっけなく非文学的に書くのも難しいぐらいだ。しかし、確かに引力は巨人と言うにふさわしい。
「ケートは窓から外をながめる。小児が球を投げて遊んでいる。彼らは高く球を空中になげうつ。球は上へ上へとのぼる。しばらくすると落ちてくる。彼らはまた球を高くなげうつ。
再び。
三度。
なげうつたびに球は落ちてくる。なぜ落ちるのか、なぜ上へ上へとのみのぼらぬかとケートが聞く。
「巨人が地中に住む故に」と母が答える。
「彼は巨人引力である。彼は強い。彼は万物を己の方へと引く。彼は家屋を地上に引く。引かねば飛んでしまう。小児も飛んでしまう。葉が落ちるのを見たろう。あれは巨人引力が呼ぶのである。本を落す事があろう。巨人引力が来いというからである。球が空にあがる。巨人引力は呼ぶ。呼ぶと落ちてくる」
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