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№2271 労災事故と製造物責任

№2271 労災事故と製造物責任

製造物責任は商品の欠陥があれば発生します
 作業中に機械で大けがが発生した場合,機械製造メーカーの責任が問われる場合がある。製造メーカーと被害者との間には契約関係はなので本来メーカーが直接責任を負うことはない。

 しかし,製造物責任法3条は製造物の「欠陥」により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは」賠償責任を負うと定める。工場の機械も製造物であることにはかわりないので,その欠陥によって事故が発生すれば製造物責任の問題が生じる。

何が「欠陥」の判断が実は難しい
 「欠陥→事故」という因果関係さえあれば賠償責任が発生するのだが,実際何が欠陥かは難しい場合が多い。たとえば包丁だって危ない代物なのだが,包丁で手を切ったくらいでは欠陥によってけがをしたとは言わない。

 しかし,金属製角材を切断する「自動式丸鋸切断機」でけがをした場合は,安全カバーはなかったかとか,使用方法の説明方法は十分だったとか,何が欠陥かは争われることになる。

労災防止基準が欠陥の基準になることがあります
 こうした危険な機械の場合,労災を防止するために厚生労働省が機械の安全性を確保するための装置や,機械の利用方法について指針などを作っていることが多い。欠陥かどうかもそうした行政指針がひとつの目安になることが多い。

東京地裁では安全カバーなどの装置が問題になりました
 東京地裁H29.1.24判決も厚生労働省局長通達「機械の包括的な安全基準に関する指針」をよりどころに,労災事故が発生した「自動式丸鋸切断機」には欠陥があったと認定した(判タ1453号211頁)。

 この事件は自動式丸鋸切断機によって指を切断したという痛ましい事故でノコギリ部分の前面扉を開ける場合には直ちにノコギリ部分が停止するあるいは,ノコギリが完全に停止するまでは前面扉が開かないなどの装置が必要だったとしている。

 また,こうした安全装置の考え方については製造された6年前に通達が出され,業界団体を通じて周知もされていたとした。
 このメーカーは欧州への輸出向けには電磁ロック式インターロックを標準装備していたが,国内向けにはそうではないかった。

事故を起こした側にも落ち度はあります
 裁判所はこうした事情から,安全装置のない自動式丸鋸切断機には「欠陥」があると判断した。但し,危険な部分で作業するからには自分でも十分注意するべきだったとして,7割の過失相殺,すなわち7割の減額を認めた。


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