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№2242 ハコ企業

№2242 ハコ企業

ハコ企業というのを知っているだろうか。
 上場した会社で本業がいつのまにか形ばかりになってしまった企業だ。企業買収を繰り返すので,事業の中身が次から次へと入れ替わる。空箱のような企業なのでハコ企業と言われている。

ハコ企業はいかがわしい
 本業が消え,マネーゲームに走っているのでとても怪しい。
 「上場」というブランドを利用して資金を一般公衆から集め,それをM&Aに投資していく。妙な投資を繰り返し,資金をどんどん会社から流出させていく例も多いようだ。
 ハコ化した企業は投資家に責任を負わない。むしろ,資金を集めて経営陣の個人的利益に使われていく例も少なくない。

ハコ企業の代表者が背任に当たるとした事例がある
 株式会社サンライズインベストメントはかつては中川無線電機という商号だったが,大阪証券取引所二部上場を果たし,その後家電事業を形ばかりに残し,投資事業を中心に展開するようになった。ハコ化したのである。

ハコ企業代表者は会社の得た利益を架空取引を利用して流出させた
 この会社は会社更生手続きをしていた株式会社長崎屋の株式を6億円で購入し,17億5000万円で売却し利益を得た。この利益は本来投資家に還元されなければならないが,当時社長だったAは,利益のうち1億円をコンサル料と称して自己に関係ある会社に支払い資金を流出させた。

一審はハゲタカ側が勝訴した
 その後,経営陣が交代して,この1億円の返還を迫った。争点はコンサルの実態のない架空取引だったかどうかというものだ。Aはコンサル契約の日付などごまかし,巧妙にたちまわった。そのため,原審ではコンサル契約がある以上,支払いがあったとしても問題ではないとしてAを勝訴させたのである。ハゲタカ側が勝利した訳だ。

控訴審は逆転敗訴だった
 しかし,控訴審ではコンサルの実態はないことを認定し,Aの行為は背任行為であるとにあたるとしてAを敗訴させた(東京高裁H28.10.12.判タ1453.129)。弁護士の実務上はこの一審と二審との判断の違いが大いに参考となる。

この事件は丁寧な事実認定が勝敗を分けた
 法律は形式の世界で,書類などが整っているとそれに沿った判断をされてしまう傾向が強い。判決文を読む限りは,ハコ企業に群がるハイエナのような連中を断罪した意義は大きい。転換点は架空取引の契約締結のプロセスを丁寧に事実認定した点にある。これは弁護士が丁寧に主張立証を尽くさないといくらいい裁判官でも認定できない。

弁護士の強みは丁寧な事実の整理で発揮される
 弁護士の強さは,こうした事実認定のプロセスを揺るぎない目的意識をもって緻密に丁寧に整理するところで発揮される。一審裁判所は事実認定の問題で覆されてしまったのであるが,この事例ではちょっと恥ずかしいかもしれない。

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