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№2208 人は本来怠け者なのか?

№2208 人は本来怠け者なのか?

 「ティール組織」(英治出版)では人は本来信頼できるという仮定から始まっている。実際にどうかわからないが,経営者は「仮定」として選択することはできる。もちろん,経営者はリアリストだ。「ティール」という夢のような会社であっても不祥事は起こるし,妬みやそねみ,パワハラやセクハラも起きうるだろう。

 「ティール組織」の理想は人は自発的になれば創造性を発揮し,生産性も上げていくという理想からなりなっている。
 しかし,そもそも経営学では人のモチベーションについてどのような議論がされているのだろうか。ティールの理想は統計的な立証を求める経営学ではなかなかむずかしそうだ。

人間関係論
 1924年から32年にかけて「ホーソンの実験」というのがあったらしい。これは特定のグループを分けて監督者を置かず,相互に相談させるという実験だ。この実験結果からホーソンさんはどうも自主管理型は生産性を向上させるという結論を出したらしい。しかし,その後の研究ではこのホーソンの仮説は否定されている。ただ,私に言わせると,機械的に分離した点に問題があったかもしれないし,分離したグループに心理学的な援助を与えたかも検討しなければならないように思う。

期待理論
 人間は打算的なので,報酬が大きければ,報酬に対する「期待性」が高まり,それにより「誘導性」が発揮され,生産性も上がるというという考え方だ。成果と報酬を巧みに結びつけることによりモチベーションを上げていくという手法だ。米国では1964年にブルームさんが実証的に研究したらしい。この期待と報酬,行動の関係は経験的には当てはまる部分があるように思うが,ブルームさんはどうも科学的な検証ができなかったらしい。

内発的動機付け(1975年)
 デシという人が「内発的動機づけ」を著した。金銭的報酬はすぐに慣れてしまい,モチベーションアップは一時のことでしかない。むしろ,お金をもらわないとやらやくなるという弊害をもたらす。ブルームさんは人は金銭など外的報酬だけではなく,高いパフォーマンスや社内で認めてもらう,自己の満足など内発的動機づけは有益だと言っている。

科学的管理法
 テイラーは人は本来怠け者とという発想で管理するべきだという議論を展開している。これに対して,マクレガーはテイラー的な発想をX理論と呼び,人間には働く喜びがあるという発想をY理論と呼んだ(「企業の人間的側面」1960年)。要はX理論とY理論の組み合わせで考えろというのだ。

 もっともな発想で,人は一つの動機で動くことはない。よい面もあれば悪い面もある。本来良いか悪いかという議論より,動機付けを細かく分析して対応した方が適切かもしれない。

動機付け衛生理論
 ハーズバークは「仕事と人間性」(1966年)で人の動機について「満足要因」「不満要因」に分け,前者を「動機付け要因」,後者を「衛生要因」と名付けた。

 例えば「責任」は満足要因で,責任を持つことにより人は動機づけられるが,責任を与えられなくても必ずしも不満を持つという訳ではない。

  報酬については,積極的な動機付けとしては一時的であるが,不満の要因としてはくすぶり続ける。不満を予防する「衛生」のためには適切な対価が必要だ。

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