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№2176 ダウンロード契約書をそのまま使ってはいけません

№2176 ダウンロード契約書をそのまま使ってはいけません

 契約書はもちろん弁護士に見てもらった方がよい。インターネットで適当にダウンロードして契約書にしてしまうと思わぬところで抜け落ちがあったり,やらなくてよい権利放棄をしてしまうことがある。

たとえば,賃貸借
 明渡にあたって,「借主は経年劣化による通常消耗部分も含めて原状回復義務を負う」などという条項があった場合はどうだろうか。

 これは借主不利,貸主有利な条項だ。判例によると,借りているうちに物は劣化するものであるから,劣化した状態で返還すれば足りるとされている(最判17.12.16)。この条項では新品同様にして返せということになってしまう。

たとえば,製造物責任条項
 「本商品による欠陥にかかわる製造物責任は製造者の責任とする。」というような条項はどうだろうか。製造物責任は製造者が責任を負うのは当たり前だろうか。

 しかし,これは製造者不利,小売業者有利の条項だ。
 欠陥というのは何も製造上の欠陥ばかりをいうのではない。「指示・警告上の欠陥」と言って,説明書などに不備がある場合も欠陥と呼ぶ場合がある。この場合には本来小売り業者が責任を負うべきだが,上記の条項ではそれがない。

たとえば,労働者派遣事業
 「派遣された労働者の注意義務違反により損害を被った場合は派遣元はその損害を賠償しなければならない」という条項はどうだろうか。

 これは派遣元不利,派遣先有利という条項で,絶対に修正しておく必要がある。派遣先の責任で現場管理が行われているのだから,現場で生じた問題は派遣先で責任を持ってもらわなければならない。派遣元のコントロールの及ばないところで生じた事故まで責任を負いきれない。

アラスカの地図で北海道旅行するようなもの
 ともかく,契約書作成上の争いはなかなか見えないが,私たちにとっては一種の戦場だ。ひな形だけを頼りに契約を締結するなんてとんでもない。アラスカの地図で北海道旅行するようなものだ。寒いところの地図だから同じだろうなんて思ってはいけない。

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