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№2168 取引の安全

№2168 取引の安全

相手方の権限確認は契約のイロハのイ
 契約締結に当たっては,相手方に権限あるかどうかは重要な関心事だ。
 特に国際取引の場合,日本のように法的な安定性に欠けるため,本当に相手に権限があるかどうかはとても気を遣う。相手が真に権利者であるかどうかの証明書を示させるぐらいのことをしなければならない。

1回きりの取引は要注意
 日本でもいきさつがあって,知っている人との取引であればそれほど心配はしないが,一回限りの取引,それも巨額な取引となると相手方に本当に権限があるか確認する必要がある。たとえば,不動産取引やM&Aなどは1回限りの取引なので,慎重にならざるえない。不動産取引の社会ではなりすまし詐欺というのがあって,本人だと偽って別人を連れてきて架空取引することがある。

信じた者を保護する「取引の安全」という言葉があります
 このように,実は権限がなかった,登記は実態のない登記だったというようなとき,日本では正しく信じた者を保護する考え方が定着している。私たちの業界ではこれを「取引の安全」という言葉で表現している。

 たとえば,株券。株式が売買された場合,株券を所持しているから株主に違いないと信じた場合,その信頼は保護される。善意取得と言って,権限あることを信じたこと,無権利者でないと知らなかった者は「善意」であると呼び,無権利者からの譲り受けであっても権利を取得できる。その反面として,真の権利者は権利を失う。

 この外にも,表見代理と言って,無権代理を知らなかった者を保護する制度がある。登記を信じた者を保護するとした定着した判例がある。

ちゃんと調査して信頼した者が保護されます
 こんな具合なので,そこそこ保護されているのだが,やはり基本は権限の確認だろう。
 こうした「取引の安全」が当てはまる場合は,本人が調べ尽くして信頼できる状態を保護するという考え方なので,何もしないでおいてだまされたということでは通用しない。本人に直接意思を確認したり,時には本人であるかどうかも,その話す内容,人間関係の様子から判断しなければならない場合がある。

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