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№2167 忘れられる権利

№2167 忘れられる権利

Googleへの削除要請が否定された事例
 前科や実名で検索できてしまうので,Google相手に検索結果から削除を求める訴訟がある。これは厚労省の承認を受けていない医薬品をマルチ商法で販売したもので,原告は懲役2年(執行猶予4年),罰金300万円有罪判決を受けた。

 事案が消費者問題で公表されることに一定の公共的意味があったことや,判決を受けて2年足らずの期間しかたっていないことから,裁判所は削除を認めなかった(H29.1.31判時2328号10頁)。

検索結果を削除させる可能性もあります
 検索結果をある程度コントロールすることが可能らしい。最高裁は公表される利益と公表される不利益を比較考量して明らかに後者が優越する場合には検索事業者に対し,当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができるとしている(最三H29.1.31判時2328号10頁)。

名誉毀損行為,侮辱行為は本来許されません
 本来,インターネット上で実名を示して不名誉な内容が掲載された場合,プライバシーの侵害や名誉・信用が毀損されたりする。それが真実であるかどうかにかかわらず,これは本来許されない。断片的に真実でも,つなげれば別の意味になってしまえば許されない。

簡単に削除が認められているわけでもありません
 しかし,日本国憲法は「表現の自由」を保障しているので,表現行為をむやみに抑制すれば,民主主義が窒息死ししてしまう。表現行為は個人の自己実現でもあるので,人格的自由も尊重する必要がある。事業する上でもインターネットは無視できない宣伝ツールと言える。

時間がすぎれば,公表する価値も失われることがあっていいです
 インターネット上の記事はいつまでも掲載され,「そんな昔のことが」と思うようなことが検索にひっかかることも少なくない。掲載当時は公共性あって公表が許される記事も,時とともに「忘れられる権利」というものがあるのではないかと議論になっている。

名誉毀損,侮辱記事に私たちはこう対応しています
 私たちがこうした事案を扱う場合,プロバイダーに削除を求めたり,検索事業者に削除を求めたりする。IPアドレスなどから本人をたどることができる場合には民事,刑事の法的手段をかまえる。

 ただし,この種の案件は,独りよがりで,自分の論理だけで動いていく異常な人格であることも少なくない。その異常さのレベルもいろいろあって,弁護士が内容証明を送ると止まってしまう場合,警察と相談して警察から電話があると止まってしまう場合,逮捕されてようやく止む場合,裁判と刑事告訴を組み合わせる場合と段階がある。

 この種の案件に特効薬は無く,弁護士としては相手の様子を見ながら手を打っていき,依頼者と付き合っていくことになる。

 関連判例
 名古屋高裁H29.3.31判時2349号28頁
 札幌高裁H28.10.21判タ1434号93頁
 東京高裁H28.7.12判時2318号24頁

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