№2148 元請けの指示と下請けの責任
最近、松江地裁で、幼稚園舎のくい打ち工事を請け負ったが、杭が支持層まで達していなかったため不同沈下が起こったという事例の判決が出た。
元請け側は支持層まで達するよう杭打ちするのは当然だろうと言い、下請側は図面通りの深さに仕上げたから責任はないと主張した。
元請けの指示に従えば下請けには責任はありません
民法の原則によると、請負人は仕事完成に責任を負うから、支持基盤に届かない杭では仕事を完成したとは言えない。しかし、注文者の指示があって、指示通りに仕事した場合には免責される(民法636条)。請負人側は図面があったということは、指示があったということだと主張したのだ。
でも何が指示なのか問題になります
しかし、松江地裁はこの場合の指示というのは「請負人に対して拘束性を持つものでなければならない」とし、杭が支持層に到達することが期待されている本件では図面をもって指示したとはいいがたいとしている。そして、5億1300万円の支払いを命じた(H28.3.31判時2347号99頁)。
「指示」の証拠を残しておくことが大切です
請負とは言っても,下請けの場合,発注者や元請けの指示に従わなければならない場合が少なくない。特に,建設現場ではまるで従業員のように動かなければならない。あるいは,ラインを作ったり,システムを作ったりする場合には,施主側がの意向はかなり大きい。
請負人としては「指示書」というようなものを作っておいたり,電子メールなどのやりとによって指示関係を明確にしておくことはかなり重要だ。
孫請けが元請けや施主に責任を負う場合もあります
なお,下請け業者が,元請けを飛ばして直接施主に責任を負うことは原則としてない。しかし,杭のように建物の安全性にかかわる重大な問題の場合は下請け業者が直接元請けに責任を負うことになる(最判19.7.6)。
杭に関わる判例
東京地裁H25.11.21
静岡地裁H24.12.7判時2147号62
さいたま地裁H19.2.9
東京地裁H15.8.1
福岡地裁H11.10.20判時1709号77頁
名古屋E&J法律事務所へのお問い合わせはこちら