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№2144 公正証書遺言でも無効になることがあります

№2144 公正証書遺言でも無効になることがあります

公正証書も自筆証書も同じ効力です
 相続により事業承継させる場合には遺言が活用される。遺言は自分の手で書く場合を自筆証書遺言,公証人役場で作成してもらうような場合を公正証書遺言とよんでいるが,効力に優劣はない。後からできた遺言が優先する。

公正証書の信用力は格段に違います
 公正証書遺言というのは公証人という資格ある者が,本人の言ったことを書きとめ遺言状として文書にしたものだ。私たちの世界では権威があり,信用力ある文書として扱っている。そのため,公正証書遺言が無効になることはあまりない。しかし,全くないかと言えばそうでもない。

判断力が少しぐらい低下しても遺言は可能です
 遺言者が高齢となり,判断能力が著しく低下することがある。意志の力も低下し,人の言うことに抵抗できないようになってしまう。そうなると,例えば,ちょっとしたことで嫁入りした娘が老いた母親を連れ出し,とんでもない遺言を作成させることがある。たとえば,「全財産を娘に譲る」とかである。

 遺言する能力というのは法律の世界では判断力がかなり低くてもありとされてしまう。これに加えて公正証書遺言となると,原則として有効なもので,否定する側が無効であるという特殊な事情を明らかにしていかなければならない。

公正証書でも無効になることがあります
 公正証書遺言が無効とされた裁判事例を見るとおおむね次の要素がそろった場合に無効となる可能性がある

 ① 臨床的に医師が判断して,判断能力がないとしていること
 ② 遺言の内容が複雑で,本人が理解しているとは思われないこと
 ③ 遺言の内容が生前の故人の態度と異なっていたりして合理性がないこと
 ④ 遺言作成過程で,受領者が深く関与していること

「うん」というだけでは本来許されません
 ちなみに,うんと頷くだけでは「口授」,つまり本人が公証人にきちんと言葉で伝えたことにはならないとして無効にした判例がある。

 最判S.51.1.16裁判集民117.1.
 大阪高裁H26.11.28判タ1411.92
 東京地裁H20.11.13判時2032.87
 東京高裁H27.8.27判時2352.60

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