№2123 いじめ「返品」への対抗策
むやみに返品はできない
最近はほとんど聞かくなくなったが、親事業者が返品して余った在庫を下請け業者に処理させるというようなことがあった。悪代官のいじめのようなもので、これは下請法に違反する。
下請法4条違反
下請法4条1項は「下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付を受領した後、下請事業者にその給付に係る物を引き取らせること。」を禁じている。これだけでは何のことかまだよくわからない。
公正取引委員会は次のような見解を出している。
① 一旦、合格品として受け取った場合は原則として返品できない。
② 納入時の検査で分からないような欠陥があったとしても、6か月たつと返品できない。
③ 納入時、不良品が分かった場合、すぐに返品しなければ6か月以内でも違法となる。
商法526条という強力な武器があります
公取の見解は、商法526条を意識したものだ。
商法によれば、6か月たつとどんなクレームも受け付けなくてよいことになる。たとえ、不良品でも6か月たつと返品も損害賠償も、修理も求めることはできない。
① 納入時にすぐに検査する。
② 検査時に欠陥が分かればすぐに通知しないと返品できない。
③ 検査時わからなくても6か月たつと返品する権利を失ってしまう。
このように返品についてはかなり厳しい制約が存在している。
これらの制約は契約書によって変更できるのだが、多くの基本契約ではこの点、必ずもはっきりさせていない。
親事業者のいじめの対抗策
下請法の規制は親事業者も当然わかっているようなところがあるので、もし、違法な返品があるとすれば、たとえば大企業の資材調達部などは故意にやっていると疑われても仕方がない。
最大の問題は、相手が大企業の場合、法律違反があるとして、きちんと対抗できるかどうかという点だ。中小企業の場合、お客さん相手に裁判などとんでもないことだ。次の注文が来ないかもしれないし、別のお客さんも離れてしまうかもしれない。
サラリーマンの交渉力は弱い
しかし、交渉の中でいろいろ使うことは可能だ。私の経験では購買・資材調達部のサラリーマンたちは威張っているがトラブルにことのほか弱い。
会社に公正取引委員会の調査が入るような事態になれば責任を取らされてしまう。
下請け企業がへそをまげて部品の供給が止まり、さらにはラインまで止まってしまうとなると、大変な責任問題になってしまう。
こういう脅かしが交渉のつけ目となることは珍しくない。
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