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№2119 社員の兼業は OK?

№2119 社員の兼業は OK?

社員の兼業が禁止される理由
 就業規則で正社員の兼業禁止を定めることが普通だ。しかし,本来オフタイムに社員が何しようと自由で、雇用契約は労働時間を制約しているにすぎないはずだ。

 就業規則で社員の私生活を拘束できるのは,私生活での兼業が社内秩序に影響を与える場合があるからだ。

 たとえば,昼間はOL,夜はキャバ嬢なんてことになると,疲れがで仕事に支障をきたす。会社の信用にもかかわる。こういうような場合は兼業禁止規定にひっかかることだろう。

 兼業を許せば,自社の秘密がライバル社などに伝わるかもしれない。開発途上の商品とか,顧客情報とか,重要情報を守らなければならない。会社の信用情報だってある。借金が多いとか,社長が借金のために走り回っているとか内部情報が筒抜けになる可能性もある。

社員の兼業禁止を正当とした判例
 橋元運輸事件(名古屋地裁S47.4.28)ではこんな就業規則があるなか,別会社を設立して取締役や社員となった者の地位が問題になった。
 
 「下記の各項の一つに該当する時は解職に処する。但し情状により減給に処する場合もある。」同四号「会社の承認を得ないで在籍のまま他に雇入れられ他に就職したとき」、同七号「その他各号に準ずる程度の不都合行為のあつた者」

 「会社の企業秩序に影響せず、会社に対する労務の提供に格別の支障を生ぜしめない程度のもの」はこの規則は当てはまらないとしつつ,この事例では一部の者について解雇を有効としている。 

兼業禁止の対処法はこれだ
 結局何が有効で何が無効かは直ちに明らかにならないが,企業法務としては次のルールで考えるのがよかろうとかと思う。

  ① 就業規則に兼職禁止規定を置く。
  ② 例外的に兼職する場合は許可申請させる。
  ③ 申請に際しては兼職する業務の内容の詳細を報告させる。
  ④ 兼職に際して守秘義務,競業皮脂義務を付した誓約書を出させる。
  ⑤ 許可については場合により条件を付し,許可取消しの可能性を告げる。
  ⑥ 兼業中の活動について報告させる。

兼業と労働時間との関係に注意
 兼業については,労基法38条1項に「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」とあり,事例によっては割増賃金を支払う可能性があるので,許可する場合には社労士などとよく相談する必要がある。

※ 橋元運輸事件判決は次のように述べている。
 「元来就業規則において二重就職が禁止されている趣旨は、従業員が二重就職することによつて、会社の企業秩序をみだし、又はみだすおそれが大であり、あるいは従業員の会社に対する労務提供が不能若しくは困難になることを防止するにあると解され、従つて右規則にいう二重就職とは、右に述べたような実質を有するものを言い、会社の企業秩序に影響せず、会社に対する労務の提供に格別の支障を生ぜしめない程度のものは含まれないと解するのが相当である。」

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