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№1998 看護師の配転

№1998 看護師の配転

 最近,当事務所は病院経営サポートに力を入れている。
 病院経営は行政上の規制が強い点で特殊な面がある。ただ,日常相談業務で多いのが労働問題だ。私の感じでは,医師の従業員に対する態度はけっこう厳しくて自分勝手なところがある。

 看護師に経理事務など看護とは別の仕事をさせることは可能だろうか。
 たとえば,どうも性格の荒い看護師がいて看護業務に向いていない,配転させて事務職をさせたいとして,そのような配慮は可能だろうか。

 従業員にどのような仕事をさせてよいかは雇用契約によって決まる。

 雇用に当たって労働条件通知書を手渡す必要があるが(何も明示していないところもあるが本来違法です),「勤務するべき場所」,「従事するべき業務」など具体的に記載する。この時に,「○○病院」「看護師業務」と記載すると,労働契約の内容はそれに限定されてしまう。

 つまり,看護師として雇っている以上,労働者側は看護師業務という労務さえ提供すればよく,他の種類の労務まで提供する義務はない(仙台地裁S48.5.21判時716号96頁)。
従って,たとえば,労働条件通知書に「看護師および一般事務」などと記載し,一般事務も行う可能性があるという労働契約にしておく必要がある。

 契約によって決まるので,本人の同意があれば問題はない。
 しかし,同意の取り付け方法も注意しないと同意が無効ということもある。特に雇用関係という指揮命令関係があるもとで,合理性がないとか,何らかの嫌がらせがあると認定されたりすると,同意そのものが無効となってしまう。

 結局,こうした配転を考える場合,次のように処理すべきだ
   ① なぜ,配転したいかを整理する。
   ② 本人に理由をしめす。
   ③ 本人が看護師に向いていないところがあれば,直す努力をさせる。
   ④ なお,適正でないと判断される場合は本人に,また理由を示す。
   ⑤ 説得して同意を得る。
   ⑥ 同意書をとっておく。

 勤務医も労働者だ。
 たとえば,勤務医がどうも生意気だというので,臨床の現場からはずすというのは原則として許されない(東京地裁)S53.7.18、判時916号88頁)。

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