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番外 法科大学院の皆さんへ できの悪い答案

番外 法科大学院の皆さんへ できの悪い答案

 法科大学院で教え始めてだいぶたつ。大学院なので実務的な教育をすればよいのだが、そもそも、法的な表現のイロハがうまくいっていないので指導する側もただ実務を言えばいいという訳にもいかない。表現の方法を教える必要がある。

 よい答案はなかなか評価が難しいが、悪い答案は誰の目にも悪い。たとえばこんな風だ。

1. 事例から問題点が抽出されていない。
  問題文には必ず問題となる箇所がある。その箇所の指摘がない。たとえば、動機の錯誤の場合、「駄馬を妊娠した良馬と誤信し、動機部分に錯誤がある」というように、事例から問題を切り込むのがよいかと思う。

2. 法律用語を正確に定義できていない。
  普段教科書を読んでいるときに、法律用語の定義を正確に押さえる必要がある。優秀な学生は読むときの厳格さを備えているので改めて言う必要は無いが、成績の悪い学生の場合、しばしば定義を曖昧にしたまま読み込んでいく。法律用語については鉄道マンのように指さし点検をし、「定義」を正確にしていく必要がある。たとえば、錯誤とは何だろうか。

3. 問題の所在をコンパクトにまとめられない
  法律は論点というのがある。論点をたとえば10文字ぐらいでコンパクトにまとめる能力が求められる。コンパクトにする努力をすればするほど、問題の本質が分かってくる。これも教科書を読むときに漫然と読んでしまい、問題の所在を正確にできていないとよい印象はない。自分ができが悪いと思ったら、指さし点検のようにして「問題の所在は何か」と問い続け、落ちなく教科書を読む訓練をするべきだ。

  これは、問題の所在を「定義」してみるという作業でもある。

4. 理論の展開に軸がない
  法律は常に理論的な展開が行われる。このときに法が守ろうとしている利益がかならずある。取引の安全とか表意者保護とか、有償性のバランスの回復であるとか、いろいろだ。こうした利益を念頭に入れた展開の軸というものがある。そのため、こうした明確な問題意識がないと一通り書いているが、しっくりこない答案になってしまう。

5. 一つの段落に複数の内容を展開しようとする
  法律は中学ぐらいの幾何の証明問題と似ていて、一つ一つ積み重ねて論旨を展開する。一つの段落に一度に複数の内容を入れ込んでしまうと当然混乱するし、何を書いているか分からなくなる。重複があろうが、なんだろうが論理的な展開に自信が無ければ、一個づつきちんと積み重ねて処理して展開するべきだ。

 これらは答案の初歩的な議論で、これができていないといくら勉強しても積み重ならない。論点は知っているが、ぼんやりしている。必要な論点には触れているが得点は悪いというのはたいていこれらの問題があり、共通している。

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