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№1902 ゲームアプリと著作権の帰属(会社か個人か?)

№1902 ゲームアプリと著作権の帰属(会社か個人か?)

 ゲームアプリにも著作権は認められる(第一次パックマン判決〔東京地裁S59.9.28判事1129号120頁〕〔中古ゲームソフト事件、最判H14.4.25〕)。
 
 しかし、ゲームと言ってもいろいろで、つりゲームのような簡単なものから、ソーシャルアプリケーションのようなまるで映画のように緻密で独創性のあるものまでいろいろある。

 著作物というからには「思想又は感情を創作的に表現した」と言える必要がある(著作権法2条1項1号)。ポイントに投げ入れて大物を釣り上げることでポイントが稼げるというゲームについては著作物としての保護を与えなかった裁判例がある。

 特定のストーリーを持って展開され、登場人物も緻密に描かれ、音楽その他の効果音も存在するようなゲームのような場合には著作権があることは疑いない。しかし、その著作権は誰に帰属するかという問題がある。

 最近「神獄のヴァルハラゲート」という人気アプリの著作権をめぐって判決があった。判決は会社側に著作権を認め、作成者に認めなかった(H28.2.25判時2314号118頁)。

原告の主張によると被告であるアプリ配信会社は1億8000万円ほど利益をあげたらしい。原告は個人としてゲーム開発にたずさわったのだから、著作権は共同著作権であるからその利益の6割の権利があると主張したのだ。

 この事件は開発に際しては原告は無報酬で参加している点で共同事業という感覚があったのだろうと思う。しかし、法人が著作物を開発する場合、開発にたずさわった従業員には著作権は認められないという条文がある(著作権法5条1項)。

 つまり、「法人等に従事する者」である場合、従事した者には原則著作権は認められない。何が職務著作権に該当するかは次の要件に従って判断される。
 ① 法人等の発意に基づくものであること
 ② 法人等の業務に従事する者が職務上作成したこと
 ③ 法人等が自己の著作名義の下に公表すること
 ④ 作成時における契約、就業規則などに別段の定めがないこと

 判決は①から④をそれぞれ順番に判断し、原告の請求を退けた。判決は原告に報酬を支払うことは認めたもののその金額は420万円だ。しかし、この事件はアプリによってかなり利益を上げていることや、ほとんど無償で開発にたずさわったこと、開発については大きな役割を果たしていたことを見ると金額としては小さい。知的作業に対する価値を不当に低く見積もっているように思う。

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