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№1892 超老舗「鍋屋」のロングテール戦略

№1892 超老舗「鍋屋」のロングテール戦略

 私が所属するあいち中小企業家同友会で10人ぐらいの小グループに分かれて経営上の経験交流を進めているが、先日は「鍋屋」という企業を訪問した。

 なんと1559年創業、江戸時代直前だ。もとは鐘とか仏像とか作ってたそうだが、今では厨房器具などを販売している。

 たくさんの在庫をもって商機得る戦略で代々来ていたが、管理は手作業であるため限界があって不良在庫がたくさん出てたらしい。おまけにせっかく在庫があるのに十分顧客に対応できないということだった。

 今の代に変わってこれを整備め、在庫や顧客の管理のデータベース化を進め、さらに楽天にも出展して成果を上げているそうだ。

 重要なのはこの在庫によって商機を得る戦略は変えていない点だ。厨房器具の部品にも応えている。店舗のIT化によって顧客が「醤油入れ」といえば、顧客がどの商品を醤油入れと呼んでいるか分かるよう整備を進めているそうだ。

 パレートの法則は何事も「上位2割が成果全体の8割を占める」という法則だが、2割を過ぎると各商品の貢献度は急激に小さくなり、小さい成果の商品が並ぶ。大きな2割はヘッド、たくさんならんだ8割はしっぽ、つまりテールに相当する。


 コンビニなどはヘッド部分を重視してテール部分はそうそう切り捨てる。アマゾンはテール部分を重視して、多様な在庫をインターネットで売り、長いテール、つまりロングテール効果を狙って商売をしている。

 「鍋屋」の場合はロングテールを生かした商売ということになる。店主はどんな小さな要求にも応えていくというのが自社のアイデンティティだという。また、よいものを長く使うというも自社のアイデンティティだという。

 つまり、ロングテールとは言ってもそれなりの差別化の中でのロングテールであることが大切だ。アマゾンは漫然と在庫をそろえてはいなかった。顧客の好みを探るソフトウェアを開発し、顧客に推薦する双方向のシステムを構築している。さらに、物流と組み合わせるという明確な差別化のコンセプトがある

 鍋屋には450年を超える歴史がある。他には類のない特別な物語が生まれる経営資源がある。「自分だけのよい厨房器具を長く」というのが鍋屋のアイデンティティだろう。よいフライパンやよい包丁を売るという一見ローカルな要求も、ここなら何でも手に入るという点では、どの町にも必要な要求となる。

 私はロングテール戦略というのは規模の経済を働かせないと利益が上がらないシステムのように思う。規模をどこで働かせるかは経営者次第だ。過去の顧客が再度来店するという点では潜在的な顧客層の規模を大きくすることも重要だろう。

 だが、ひとつの店舗で潜在顧客層を厚くするのには限界はないだろうか。この町で求められていることは、あの町でも求められている。インターネットの整備や物流の発達はあの町、さらにあの町にもこの町で求められた内容を提供できるようになっている。小さな利益でも規模が広がれば大きな利益となる。それが小規模事業者のロングテール戦略ということになるように思う。

鍋屋は今後は支持顧客層を増加させできるかぎりインターネットに頼らない商売をしたいということだ。もちろん、それも規模を追求する手段のひとつだし、身の丈にあった手堅い商法かもしれない。

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