№1878 何をやらないか。
マイケル・ポーターは「戦略の本質とは、何をやらないかという選択である」という名言を述べている。自社が関わる商品が利益を生み出すチャンスはたくさんある。自動車は利益を生み出すが、部品の供給、生産、販売、それらに関連する設計、公告、損害保険、ガソリン、いろいろなチェーンで結ばれ、それぞれの場所で利益が生み出されている。
しかし、自社の経営資源からみて、利益を生み出す場所は限られている。その時にどこを選ぶかという選択よりも、何をしないかという選択の方が重要であることが多いというのだ。
中古車販売会社が利益を得ようにも過当競争で参入が難しい。しかし、中古車を売るという戦略を放棄し、中古車を買うという戦略を選択することで新しいビジネスモデルが誕生した。ガリバーは少しでも高く売るという戦略を放棄して、一定値段で確実に売れれば良いと考えた。仕入れの面で勝負しようと考えたのだ。生み出された戦略は「買取専門」というコンセプトだ。
何かに対し資源を投入して利益を上げるのであれば、何かを犠牲にする関係が常にある。この何かを犠牲にするという勇気こそが戦略生み出していうというのである。戦略の決定はこうしたトレードオフつまり二者択一の連続だ。しかし、この何か捨て去る際に生み出される選択こそがイノベーション言われるものだ。
スターバックスは「物を売る」という発想を捨て、「空間を売る」、自宅でもない、職場でもない第三の場所を提供すると戦略となった。フードには力を入れず、割高でも高い珈琲やラテ、カプチーノといったおしゃれな商品を置いた。
有名なサウスウエストはハブ空港を使わない(実際には使えなかった)という戦略を選択し、小規模二次空港をつなぐ「空飛ぶバス」という発想で戦略を組み立てた。機種はボーイング747のみ、座席指定は無し、乗り継ぎは前提としないなど様々なものを切り捨てて、短距離国内便に特化していき安価で手軽なバスような航空で成功を収めた。
「何をやらないか」というマイケル・ポーターの問いには、普通にやっていては競争にならない、つまり、いずれは価格競争に陥りみな自滅するという問題意識があり、一方で誰も見たことがない新しいものを目指していくという創造的指向がひそんでいる。
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