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№1858 労使の泥仕合

№1858 労使の泥仕合

 経営者たるもの労働組合から逃げてはならない。労働組合の団体交渉権は憲法上の権利として強力に保障されているため正面切った交渉は避けられない。経営者としては正面からぶつかり、道理をとき、時には社内の事情も説明して誠実に交渉に臨むのが最も適切な対応だ。団交に際して弁護士、社労士は必要なアドバイスをすることになる。

 ところで、会社の中には労働組合を嫌って労働組合社員を切り捨てようとする強攻策に出ることがある。この場合は本当に泥仕合で会社の存続は大丈夫なのだろうかと考えてしまう。大阪高裁の事件はそんな事件だ(大阪高裁H27.12.11判時2300号44頁)。

 この会社は生コンの製造販売を行う会社であったが、労働組合の存在を嫌い、会社分割してしまった。つまり、製造部門と運輸部門と分け、運輸部門の分割会社として労働組合員を残し、残りを新しい新設会社に移したという事例だ。組合員が残った会社はすぐに閉鎖し、組合員は解雇された。

  判決では組合排除をねらった会社分割を違法であるとして賠償責任を認めた。さらに、会社分割をアドバイスをした司法書士にも賠償責任を認めている。事例からすれば露骨な組合つぶしで賠償責任はやむ得ないと思われる。会社分割という「生兵法」を利用した結果、こんなことになったのだろう。

 さて、この事件は労働組合にも賠償責任を認めている。この組合は社長宅周辺に街宣車を持ち込み、拡声器で実名を連呼して「未払い賃金を払え」と騒ぎ立てていたようだ。原審では半径300m以内に近づくなと言う面談強要禁止の判断も出ている。

 こうなるともう泥仕合で、どこかでやり方を間違えたとしか言いようがない。
 たとえ、組合に問題があろうとも、経営者たる者、組合を避けて経営することはできない。

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