名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№1847 新事業は借金を引き継ぐか

№1847 新事業は借金を引き継ぐか

 債務超過会社が新事業を立ち上げ、借金から逃げていくというやり方がある。こうした発想は弁護士でも持つが、倫理的な問題を残す。健全な経済社会は健全な経済道徳に支えられないとうまくいかないというのが私の信念だ。

 そうは言っても事業再生に際して、新事業を立ち上げ過去の借金を遮断する手法は中小企業法務にとって重要な課題だ。借金を遮断できるかどうかという点で「商号の続用」という問題点がある。

 つまり、別事業であっても(たとえ、株主、経営陣が別であっても)同一商号を利用すると、借金は移ってしまう(会社法22条1項)。株式会社名古屋としていたところ、別に株式会社NAGOYAを設立して取引を始め、徐々に事業を移してしまう。残った、「名古屋」を破産させる。この場合、別会社なので本来旧会社の借金を背負うことはないが、同一の商号であると判断されるとNAGOYAは借金を背負うことになる。

 つまり、同一の商号だと、同一の外からは主体であると判断されて取引されるために、そうした外観を信頼した者を保護しようというのがこの条文の趣旨だ。ただ、最近はいろいろ難しい議論があって、ある意味、借金逃れを許さないという趣旨じゃ無いかとの議論も出ている。

 この「商号」、最近は徐々に適用の範囲が拡大されている。
 商号とは会社の登記に記載されている会社の名前であるが、単なる「屋号」でも同一の屋号を使っていれば類推適用されるようになっている(最判H162.20)。名古屋ゴルフクラブという「屋号」である会社がゴルフ場経営していた場合、別会社が名古屋ゴルフクラブという「屋号」で経営始めても、別会社は借金を担ってしまうことになる。

 さらには最近ではブランドの続用にまでこの条文を当てはめる判例が出ている(東京地裁27.10.2.金判1480号44頁)。

 最近、借金逃れを防止するために会社法23条の2が設けられた。
 一般の方には難しい条文なので、「事業譲渡で借金逃れを許さない」という条文ぐらいに覚えておけばよいかと思う。

 会社方23条の2
   譲渡会社が譲受会社に承継されない債務の債権者(以下この条において「残存債権者」という。)を害することを知って事業を譲渡した場合には、残存債権者は、その譲受会社に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。ただし、その譲受会社が事業の譲渡の効力が生じた時において残存債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。

名古屋E&J法律事務所へのお問い合わせはこちら
                 → http://www.green-justice.com/business/index.html  
イメージ 1