№1841 遺言は厳格な手続きです
中小企業の事業承継という時、跡取りに株を譲ることになるのだが、重要なのは税金対策と相続人対策につきる。そして、5年から10年ほどかけて対策をとりつつ、最終的に死亡時にいくら現金を残しておけば良いのかということに収れんしていく。
相続にかかわる法的対策というのはそれほど多くない。
その一つに遺言がある。遺言状というのはみな知っているし、たぶん必要なのだろうなと思っているのだが、なかなか書かない。「兄弟でもめるから必ず作っておいてくださいね。」と繰り返し依頼者に言うのだが、そのうちと言っているうちに突然死んでしまったりする。
ところで、遺言状は厳格な様式行為と言われている。つまり、法律の方式にのっとって作らないと無効になってしまう。自筆証書遺言と言って自分で作成する場合は次の点を注意する必要がある。
① 自分で内容を書くこと
② 日付を書くこと
③ 自分で署名すること
④ 印を押すこと
「2016年8月吉日」などと書くと無効になってしまう。こよみ上「吉日」という日付はないからだ。自分で書かねばならいから、パソコンを使ってはだめだし、誰かが手を添えるとだめだ。
変更方法も法律がちゃんと方式を定めていて(民法968条2項)、これに従わないと変更したことにならない。
ともかく、遺言は簡単なようで、いろいろ制約もあるので、早めに弁護士に相談して作っておくことをお勧めする。倒れてからでは自分では書けないので、遺言を作るチャンスが無くなる。跡取りにとっては本当に困る。
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