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№1820 憲法を守ろう

№1820 憲法を守ろう

みなさま
今度の選挙は憲法改正を問う重要な選挙です。
私は憲法改正に反対しています。憲法を守ることは法律家の使命だと考えています。

1. 今の憲法が何を守っているか
  今の憲法は個人の尊厳を最高の価値としたものであり、人権尊重と民主主義を保障しています。これはフランス人権宣言から始まる世界史の到達点を表現しています。人の一人一人が自由であり、自由に発達を遂げるべきであるとするのが今の憲法です。個人の自由があって初めて自由な経済が成り立ち、自由な経済があって今日の繁栄があります。

  平和主義は戦前戦中を通じて日本が独裁国家に陥って侵略戦争を進めていった反省に立っています。武力によらない新しい秩序を作り上げようというのが憲法の理想です。こうした理想に向けた努力は国連を中心に世界各地の心ある人たちの努力によって進められています。貧困や飢餓、戦争の恐怖、深刻な環境破壊、こうした恐怖からの自由を実現するために世界中の多くの場所で多くの人たちが命がけの努力を続けています。

  今の世界秩序がアメリカを中心にできあがっています。いいところも多いでしょう。しかし、戦後の歴史の中でアメリカはたえず戦争を続けてきました。その多くは米国国益を中心にした戦争でした。アメリカ中心の秩序が平和であるとは限りません。特にイラク戦争は世界の秩序を混沌とさせた非常に罪深いものでした。どうか、アメリカとともにいなければ世界平和や経済繁栄はないというドグマにとらわれないでください。

2. 何が変ろうととしているのか
 今の安倍政権の理想は「王権復古」「富国強兵」の実現としか思えません。

 彼らの憲法改正案は「公共」を重視し、公共のために個人は犠牲になるべきだという考え方です。公共は国民の最大幸福を実現するものですが、彼らの公共は個人を超越した民族の利益です。時代的な変化はありますが、その発想はナチスなど全体主義の発想です。

 彼らの草案には軍隊の規定が置かれています。この武力は海外で使うばかりではありません。国内秩序維持のためのもので、人権を抑圧し、強い権力で人々を統制するためにも利用できるようになっています。

 戦争中、戦前、多くの言論が野蛮な暴力によって抑圧されてきた歴史をよく思い起こしてください。戦前、自由を求める思想家が野蛮な弾圧によって亡くなっていきました。

3. 私たちはどんな世界に生きていきたいのか
 世界経済の繁栄は個人の自由が保障されてこそ実現します。君主制から民主主義への転換が同時に個人の自由という概念を生み出してきた歴史が証明しています。人々の経済的、社会的、文化的要求に応じて商品開発のアイディアが生まれ、より便利に、より快適に、より文化的に私たちの文明は発展してきました。個人の自由こそが経済発展をもたらします。

 人は誰でも平等であるべきです。貧困の悪循環から抜け出せない人はたくさんいます。今の社会はけっして平等ではありません。富が適正に再分配され、実質的に生活が保障されてこそ真の平等は実現します。彼らは貧困であるが故に自由が奪われています。彼らがより自由であれば、より大きな経済繁栄がもたらされるでしょう。

 実質的な平等を実現する国家を私たちは福祉国家と呼んでいます。憲法福祉国家の理想をかかげ社会保障制度を整備してきました。国家が真剣に福祉国家を実現しようとすれば人々は国家を信頼することでしょう。北欧の人々が高い税を許容するのは国家が必ず保障してくれるという信頼と安心があるからです。

 世界の秩序は大きく動きつつあります。
 国際秩序は国家間の秩序だけではなくなりました。「個人の尊厳」が世界の共通の価値になりつつあります。いかなる国も個人の尊厳、個人の権利と自由を踏みにじる考えを表だって出すことはできません。
 それが建前であったとしても、今はどのような野蛮な国でも人々の権利を守る考えを表明せざる得ません。

 多くのボランティアやNGO、国連職員が個人の権利を守るために日々奮闘しています。世界は「個人の尊厳」を共通の価値観に秩序を作ろうとしているのです。そして、少しずつではありますが、個人のための世界秩序という考え方が成長しています。

 武力による威嚇が世界の平和を作っているのではありません。諸国民に対する信頼こそが世界の平和に貢献するのです。憲法前文がなぜ「諸国民」としたのでしょうか、なぜ「諸国家」としなかったのでしょうか、私たちはその意義を深く考える必要があります。
 私たちはこうした世界史の大きな流れを正確に理解しなければなりません。

4. 次の参議院選はとても重要な選挙です。
  メディアが争点にしていなくても、憲法改正問題は重要な争点です。
  みなさまにおかれては、今度の選挙の重要性をよく考えて、憲法改正に反対する勢力に投票してほしいと思います。

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