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№1812 別会社による借金のがれ

№1812 別会社による借金のがれ

 別会社による借金逃れを許さないという裁判例はいくつもある。「その一つに法人格否認の法理」という考え方がある。

 確かに、会社経営が悪化した際、別会社を作って事業の継続を図るという手法がある。債権者にとってはたまったものではないが、顧客の関係、雇用の確保など企業自体が社会的な財産と考えればこうした手法も一概に悪いとは言えない。

 政府も平成16年ころから「事業譲渡」による事業再生という考え方を打ち出し始めた。
 実際、倒産してしまえば回収は困難なのだから、少しでも社会に役立った方がよいとも言える。

 しかし、商道徳の観点からはどうだろうか。モラルハザードによって取引や法に対する信頼が失われ長い目で見れば、社会にとって損失ということもある。

 ともかく、「法人格否認の法理」というのは法人が別の存在であることを理由に財産などをそちらに移し、古い会社には借金だけ残すような場合に利用される。債権者にしてみると究極の手段だ。本来ペーパーカンパニーでも法人は法人、別の人格というのが法の考え方だ。この法理はこれを否定するのだから簡単ではない。

 最高裁は法人が形骸化して独立性を失っているような場合に、法人格を否認する(S44.2.27)。また、借金を逃れるために同一の商号で同一の事務所で経営するような場合、濫用事例として法人格を否認する(S48.10.26)。こうした考え方はほぼ確立している。

 最近でもゴルフ場経営の事例がある。ゴルフ場経営が斜陽化し、会員預託金を返さないというトラブルが日常化している。最近ではすっかりあきらめてしまっている感のある分野である。別法人を作って借金から逃げようという例は多く、これを追求する動きがある。

 最近もこうした判決が出ている(東京地裁、H27.10. 8 判タ274)。
 あるゴルフ場会社では事務所所在の同一、役員の重なり具合、事業の内容同一、従業員の同一、商号の主要な部分が同一など企業の本質にかかわる部分が同一で、かつ、企業財産の移転があるような場合、別会社が設立する経緯が不透明きわまりないような場合はこうした「法人格否認」が利用され、債権者が勝訴している。

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