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№1807 請負と派遣の区別、最近の事情

№1807 請負と派遣の区別、最近の事情

 最近、工場現場の一部を社内現場として業務請負契約にする形態に関する高裁判決が出された。原審は実質派遣契約で違法としたが、高裁は請負契約であると認定した。その違いは次の通りだ(東京高裁H27.11.11判時2288号102頁)。

   ① 製造条件が完全に標準化されておらず、社内現場に任されていた。
   ② 社内現場の従業員管理は下請けが行っていた。
   ③ 作業員のネームプレート、制服なども区別されていた。
   ④ エアシャワーやクリーンルームの設備も分かれていた。
   ⑤ 採用手続きは独自のものであった。
   ⑥ 賃金、手当も独自に決められていた。
 
 そうまでして区別する必要があるかと思うが、企業にとって雇用調整の魅力は大きかったのだろう。

 請負と派遣とは言葉は明確だが現場での区別は非常に難しい。派遣契約は雇用関係と指揮命令関係が分離される契約だ。つまり、労働者は派遣会社との間で労働契約を締結するのであるが、働く現場は派遣先であるし、派遣先の指揮命令に従う。

 請負はというと、同じ現場で働いたとしても、現場の元請けの指揮命令には従わず、下請会社がとりしきり、現場を動かすという形態をとる。しかし、そうは行っても実際には現場で元請け側の指示が有り、それに従って動いている。

 名前ばかり請負だとしても、実質的には派遣労働であることがある。派遣労働法はいろいろ制約が厳しいのでそれを脱法するために請け負いという形式をとっている。この場合、派遣労働法違反ということになるが、契約が無効とはしないというのが最高裁の考え方だ(H21.12.18)。
 
 労働力を融通ような契約は「労働者供給契約」と言われて、職業安定法で禁止されている。この禁止はかなり厳格だ。これには、港湾や探鉱で職業紹介と称して給金のピンハネが横行し、労働者が過酷な状態に置かれ、やくざなどが現場を暴力でしきるような歴史的背景がある。しかし、違法であろうとなんであろうと派遣契約という特殊な契約形態をとっている以上、労働者供給契約とは区別されるというのが最高裁の考え方だ。

 今回はそもそも請負と、派遣労働との区別が問題になったが、地裁は偽装請負、つまり派遣だとし、高裁は請負であったと認定した。

 実務的には請負、派遣、委任、紹介料契約、顧問契約など区別が問題になっている。

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