№1706 ブラザー工業株式会社
先週、企業団体の企画でブラザー工業株式会社の見学をさせていただいた。
ブラザーは明治41年創業、当時は高級機器であったミシンの修理から始まっている。1925年に安井正義が事業を承継して弟ともに安井ミシン商会を起こしている。
安井正義は大阪にミシンの修行に出かけて、17歳ころに輸入ミシンの国産化を目指そうとしたのだそうだから志が高い。社史によると昭和7年ミシンの量産化に成功したのだそうだ。昭和7年に作成されたという「ミシン機製造株式会社設立趣意書」が本社には展示してあるのだが、国家経済を救済するためには機械国内の量産化が必要だ、出資してくれれば国のため、働く人のためになる、大いに利益を上げるから配当も高いと出資を呼びかけている。
安井正義は会社の理念としてこんなことも示していた。
一、働きたい人に仕事を作る
二、愉快な工場を作る
三、輸入産業を輸出産業にする
創業者の志は常に高い。
一番こころを打ったのはこれだ。
「優れた品質、無言の奉仕」
このほかにもけっこう勉強になった。ブラザーはミシン製造で培った技術を徐々に他の部門にも応用していく。プレス加工の技術を活かして家電系商品に取り組んだり、バイクの製品にも取り組んだようだ。家電から徐々に電子機器に移り、タイプライターからプリンター、ファックスなどに展開していく。もし、ブラザーがミシンにこだわっていたらとっくにつぶれていただろう。
自社の強みを常に応用し、新しい世界に取り組んでいる。普通のイノベーションというのも変な言い方だが、普通のイノベーションは自社の強みの隣にある。自社の強いところを活かして別の商品、別の業界に参入しようところで工夫が生まれ、イノベーションが生まれる。大きくなる企業は違う。
ブラザーは最近の愛知万博の時に、「網膜操作ディスプレー」というのを発明し展示したそうだ。詳しくはこちら
こんな感じらしい。
これはスクリーンがなくても立体画像を見ることができるという画期的なものだ。でも、今はコストがかかりすぎて商品化していないそうだ。詳しくはきけなかったが、もし、ここにオープンイノベーションの発想が入ったとしたら、別の事業展開になってたかもしれない。私が知らないだけでもういろいろやっているかもしれないけどね。