№1688 会社乗っ取りはこんな具合
テレビドラマではハゲタカのような連中が会社乗っ取りを企てるシーンが出てくる。愚かな経営者が倒産を免れたい一心で判をつき、会社を乗っ取られてしまうようなシーンだ。こういう状況は弁護士を長くやっていてもなかなかないが、実際にある。
私が経験した例でも会社のお家騒動に乗じて、よく分からないコンサルタントがあらわれて私が助けてやる、とりあえず株式を全部自分に譲ってほしいともちかけられて、株式を渡してしまった例がある。
このハゲタカ系の乗っ取りケースはこんな具合ではないだろうか。
まず、特徴的なのは会社に多額の負債が存在して倒産の危機にある点だ。社長、あるいは会社関係者は借金のための心労が重なり、心がすっかり弱ってしまっている。
そこに、会社整理に手慣れているような口ぶりの詐欺師が現れ、借金を払わなくても助かる方法があるということを持ちかける。経営者としてはそんな魔法のような方法があるのかと思ってしまう。詐欺師は「裏の話があるのだ」などと裏技に精通していて、なんとかなるようなことを言う。
そこで、別会社を作り上げて、そこに事業を移すことを提案する。
ここまでは、通常の債務整理でもありうるところだ。問題はこのとき、これはあぶないことなので、別会社の株主は別の人間がいいと持ちかける。危ない橋なので自分が株主を引き受けるなどと持ちかける。経営者が断ると、自分も危ない橋を渡るので株主をさせてくれないと困ると強引にもちかける。心の弱っている経営者はここで了解を押してしまう。
あるいは、お家騒動があったりすると、ともかく自分に株式を集めてくれれば、頑固な創業家、あるいは会長を押さえてやるなどともちかけ、自分のつてで仕事を引っ張ってくるとか、負債はうまく裏技で整理できるとか適当なことをもちかけて株式をただ同然で取得することもある。
弁護士の中にはこうした手合いに手を貸すのもいるから困るのだが、長くつきあっている顧問弁護士があるなら本当によくよく相談して物事を決めていかなければならない。