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№1681 あとで困る、ずさんな株式管理

№1681 あとで困る、ずさんな株式管理

 株式管理は中小企業でも無視できない。むしろ、大量に株主が存在する上場会社よりも重要だ。でも、中小企業の多くは株式管理に無頓着だ。

 たとえば事業承継にあたっては株式を誰にどのように配分していくかは決定的な意味を持つ。私たちは税理士さんなどと協議しつつ株式の分配方法や時期を慎重に決めていく。

 また、会社防衛のために第三者に株式を割り当てるようなことも行うことがある。創業家に遺産争いがあるため、現経営陣の地位を防衛するために第三者割当を利用することもある。

 ちょっと会社の規模が大きくなると第三者割当によって企業連携を作り上げていこうという試みある。あるいは、社員に持ち株会などを作らせて株式を渡すこともある。

 第三者割当の手続きは株式の発行内容を株主総会の特別決議で定める必要がある。特に有利な価格で発行する場合は代表取締役はその理由を説明しなければならない。いつ、いくらで、どのような株式を発行するかについては取締役会に一任することもできる。

 ともかく大事な株式だが、多くの中小企業ではほとんど管理されていない。確定申告書に株主を書く欄があるので、それが株主名簿のようになっている。古い話なので今では誰が株主なのか、どこに株主がいるのか分からないでいることもある。社員に配りすぎて困っている会社もある。株券を発行しているが、裏書人が全く思いもよらない人物や会社だったりする。

 最低限、株主名簿ぐらいはきちんとしておいたほうよいし、株式がいろいろな人に散失しているようであればどこかで整理しておいた方がよい。

 なお、第三者に割りあてる「有利な価格」については最高裁判例が出て、「非上場会社が株主以外に新株を発行するに際し、客観的資料に基づく一応合理的な算定方法によって発行価格が決定されていたといえる場合には、その発行価格は、特別な事情がない限り『特に有利な発行価格』には当たらない」としている。つまり、株価の算定方法はいろいろあるが、根拠と合理性がいろいろあるのでどれをとってもよいという結論だ(H27.2.19判タ1411号67頁)。

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