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№1651 頭でっかち,心でっかち

№1651 頭でっかち,心でっかち

 今日は東海高校同窓会総会(愛知県の東海高校です。)だった。会では一橋大学特任教授と山岸俊男先生の講演があって,非常に面白かった。


 先生のお話は心に支配されると真実を見失うという点にある。ある意味客観的だと思われても心に支配されると真実は失われる。

 たとえば,バブル期,日本の離婚率は顕著に低下した。経済的利益が進めば離婚は経るとか,経済の発展により結婚しない人はしなくても生活できるようになったとかいろいろな仮説はある。しかし,真実は離婚しやすい年齢,つまり結婚後5年たつ世代人口の急激な減少が見かけの離婚率を減少させたということだ。団塊ジュニアが結婚5年を脱し,離婚しなくなったせいらしい。

 このように,頭でっかちと言われようと,真実を見失う「心でっかち」よりましだというのが講演の主旨だ。

 もうひとつ。
 個人主義者は自分勝手というのも「心でっかち」だという。先生の研究によると個人主義が発達した国ほど人との協調は進む。つまり,個人主義が進んだ国は個人はたがい協調する姿勢が無いと社会に参加できない。日本の「和」の心は実は他人と同じでありたいという意味あいが強い。

 そして,この「和」は日本の文化というのも「心でっかち」だという。つまり,日本人の伝統的な文化というよりは,日本人の置かれている状況が日本人の行動,つまりまわりと同じでありたいという考えを作り出している。こういう側面も見落としてはならないという。

 この話は文化心理学という分野なのだそうだ。

 この議論は示唆するところが多い。たとえば,こんなのはどうだろうか。
 社内のルールを徹底し,社員の個人の自己決定権を尊重する社風については,ばらばら,協調性がないという評価になるだろうか。社員の私生活も含めた人間的交わりこそが社内の団結を意味するという考えは正しいだろうか。

 しかし,実際は違うように思う。社内のルールを徹底し,個人を公平に評価し,個人の権限と責任を明確にして自由を与えることで会社は活発化する。社内の協調も生まれる。社長は社員個人の私生活に踏み込まなくても協調と信頼は生まれるかもしれない。社内の個人主義的傾向,つまり個人として責任を持つという傾向はプロフェッションとしての誇り,責任,行動力を生み出すかもしれない。

                   同窓会総会のお土産,東海学園「和三盆」
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