№1562 ストリートビューとプライバシー侵害
最近は誰でも撮影した写真を公表できるので,私的事情の公表,つまりプライバシー侵害は常に問題となる。インターネット関連の広告業,探偵業はもちろん自社の広告宣伝で利用される写真などでも注意を要する場合があるかも知れない。
私的な事項がみだりに撮影され,半永久的に他人に認識されるような場合,プライバシー侵害となりうる。これは容ぼう以外の私的事項でもありうることだ。たとえば,他人のゴミ箱の中ゴミを撮影してインターネットにアップすることは許されない。
プライバシーについて判決は「私生活上の平穏」をあげ,「人が私的な空間・時間において,社会から解放されて自由な生活を営むという利益の保護」と言う。私的な情報について,その流通をコントロールする権利と言い直される場合もある。
しかし,社会との接点がある以上,私的事項が社会にさらされることは避けられない。何でもかでも違法とすれば社会はかなり窮屈なものになるし,人々の社会での交流する利益や知る権利の侵害となる場合が出てくる。
最高裁は肖像権について公道においても認めている(最高裁S44.12.24)。 しかし,撮影が違法となるかはがまんの限界を超えているか否か,「被撮影者の私生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかが判断基準とされる(最判H17.11.10)」。こうした受忍限度の要素は一般的には被撮影者の社会的地位,活動内容,撮影の場所,目的,態様,必要性などがあげられている。
ストリートビューについては次の事情が重視されて違法ではないとされた。
① ベランダなどにかけてあるものがなんであるか判別できないこと(本件ではベランダに干してある下着も写っているとして争われた。)
② ベランダは公道から見えるものであること
③ 本件画像が高精細というわけではないこと
④ 個人名の写るものは写っていないこと
⑤ 公道における撮影について私的事項が写真撮影されていること自体は一般に許容されていること