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№1512 多数乱戦業界でのイノベーション

№1512 多数乱戦業界でのイノベーション

 マイケル・ポーターが示す多数乱戦業界での分析やイノベーションのあり方は中小企業家の戦略策定にとってかなり有益だ。

 多数乱戦業界では業界が整理統合されない経済的必然性が存在する。この経済的な必然性を新しいアイディアによって打ち破れというのがマイケル・ポーターの発想だ。小規模林立状態の要因を分析するとは,その要因を克服すれば業界をリードできるという意味に他ならない。

 マイケル・ポーター流,打開へのイノベーションは大きく二つの方向に分かれるように思う。
 ① 経営上,技術上イノベーションによって規模の経済を実現する。
 ② 規模の経済を追求せず,高品質,高付加価値を実現する。

 前者はたとえば名古屋のコメダのように,「自分たちの町のコメダ」というようなブランド作りの手法を標準化し,全国に展開している。ここでのイノベーションはブランド作りの標準化と徹底した教育システムにある。コメダの客はコーヒーを飲み来る客だけでなく,フランチャイズに参加する店主もまた客であり,その顧客満足も高めている。

 後者はたとえば滋賀県近江八幡市のお菓子屋さん「たねや」が典型を示しているように思う。たねやは創業明治5年の老舗菓子店だ。たねやは洋菓子にも展開し,洋菓子の技術を磨くことに専念してきた。国際的なコンクールでも多くの賞を受賞している。今やたねやバームクーヘンで有名になり,全国に展開している。高品質商品,高付加価値商法の典型ではないだろうか。

 山口県祝島に小さな島が有り,そこの氏本農園では豚を放牧して育てている。農家から余った野菜などをもらったり雑草を食べさせたり豚は何でも食べる。体によくないものは自分でも分かっていて食べない。この豚は品質が高く,特定の高級レストランにしか出荷していない。これは集中戦略が成功している例だ。

 ともかく,どちらの方向を目指すかは社長の理想にも左右されるだろうし,会社の能力にも左右されるだろう。しかし,ポーターが示しているように
 ① まず自分たちの「業界」は何か,
 ② 業界の動向を決める5つの力を検討し,
 ③ さらに自社の業界内での位置づけを考える。
 ④ 自社の資源をよく考え,業界内グループでの自社の位置づけも検討していく

 そして,最終的にめざすべき方向を決断することになるだろう。