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№1458 事業承継時における株式分散の諸問題

№1458 事業承継時における株式分散の諸問題

 事業承継は会社を引き渡すことだから,株式の取扱は事業承継の主要なテーマだ。
 創業者はいずれは亡くなる。この機会に株式の分散を防いでおきたいとことがよく行われる。事業承継時に株式の分散を防いだり,分散した株式を取り戻すということはできるのだろうか。

 事業承継は通常は相続という形式で行われる。相続では法定相続分というのがって,妻が2分の1,残りを子供らが等分に分ける。子供達の権利は平等だから株式についても等分に相続してしまう。それでは当然まずい。跡取りに株式に集中するよう早い時期から対策を立てておく必要がある。

 創業者として頭に入れておかなければならないのは,株式という財産はお金にならないという点だ。跡取りは会社という大きな財産を手に入れるかも知れないが,現金が手元にある訳ではない。相続税,他の相続人に対する慰留分など大きなお金が必要となることがある。だから,この場合,単に株式を譲ると言うだけでは不十分だ。

 跡取りに対して漸次株式を譲渡し,最後には遺言などによって相続させていく。途中,跡取りには創業者の死亡時に備えて多額のお金を用意してやる必要がある。さらに,妻の配偶者控除を利用する場合には,妻の死亡時という第二次相続もきちんとしておく必要がある。

 相続時,株式の分散を防ぐ方法に,株主に対する売り渡し請求権を定款で定めることができる(会社法174条)。また,相続の時に問題にされるのは,創業時,おじさんとか親戚に頼んで形だけ株主になってもらっている場合がある。この処理がかなりめんどくさい。創業者は生きている間に関係者に話をつけて,名義をもどしておく必要がある。

 他にも,持ち株会とか共同経営ということで,少数の株式を渡すことがある。気前よく返してくれればよいが,世の中簡単ではない。どうしても,少数株主を排除したい場合に,分散して少数になった株式について,株式の併合を通じて少数株主の株式を端株化して買い取ってしまうと言う荒技がある。


なお、平成26年からは90%以上単独で所有する特別支配株主は少数株主の株を強制的に買い取ることができる制度が発足しました。