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№1423 パワハラから自殺した事例

№1423 パワハラから自殺した事例

 被害者は金属琺瑯加工業を営む会社に勤務していたが,平成21年1月26日,愛知県瀬戸市内の公衆トイレに自殺した。遺族は自殺の原因が社長や幹部による日常的な暴言,退職強要があったためとして裁判し,勝訴している(名古屋地裁H26.1.15判時2216号109頁)。

 パワハラというのは職場の上下関係など労働者の逃げられない状況下で行われる暴力,暴言,精神的な圧力を言うが,指揮命令下で行われる注意との区別がつかない場合もあるので困ることがある。なんでもかんでもパワハラと困った社員もいる一方で,部下を殴りつけたりするようなめちゃくちゃな社長,上司もいる。

 裁判所の認定によると,社長は「ばかやろう」「てめえ,何やってんだ」「どうしてくれるんだ」「ばかやろう」などと汚い言葉で大声で怒鳴っていた。加えて,被害者の頭もたたいたり,殴る,蹴ることもあった。

 ある幹部は「会社を辞めたければ7000万円払え,払わないと辞めさせない。」と言ったこともあった。さらに,払えないようなら家族に請求するとまで言っていたらしい。しかし,一方でくりかえしくりかえし退職するよう迫っていたようだ。恐怖している被害者に社長が退職届けも書かせていたらしい。

 被害者は警察にも相談に行き,落ち着きがなくなりびくびくした様子となり,「仕返しが怖い」「明日からまた仕事か」「昔はこんな風じゃなかったのに」と独り言を言ったり,絨毯に頭をこすりつけて「あー」と言ったりし,最後には「ごめん,オレがいると,みんなに迷惑が掛かるので死ぬしかないと思う」と遺書を残して自殺した。

 そして,裁判所は社長や幹部の違法行為を認めて賠償を命じた。

 本件は密室化で行われた行為で,原告側の弁護士はよく立証できたと思う。このやくざのような社長を見て,こんなやつもいるんかと思うかと他人事にするか,自分にも部下を追い詰めていないかと改めて自分を見つめるかはもちろん自由だ。