名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№1407 オープンイノベーションの定義

№1407 オープンイノベーションの定義

 オープンイノベーションはチェスブロウが提唱してきた概念だ。それは,20世紀末ごろから,伝統的なイノベーションシステム,つまり自社内でのみ実現するイノベーションは限界に達したという問題意識がある。知識の流動性が高くなるにつれて,イノベーションはもっとオープンなシステムの中で実現されるべきだと考えたのである。

 私はオープンイノベーションという発想に強い魅力を感じている。それは資源の少ない中小企業にとって社外からのアイディアあるいは社外との連携によってイノベーションをはかっていくというのが生き残るための重要な企業戦略の一つだと考えるからだ。

 ここではもう一度,オープンイノベーションの定義について触れたい(「オープンイノベーション」ヘンリー・チェスブロウ他,英治出版)。

【クローズドイノベーション
 20世紀当初,大企業は研究開発から流通までの垂直統合によって規模と範囲の経済を生み出し,中小企業や新規参入企業に対する競争優位を確立していた。チェスブロウはこの戦略の思考様式を次のように論じている。

「これは,イノベーションの成功には管理が必要だという考え方である。このパラダイムは,頼りになるのは自分だけだという感覚を企業に強く植え付けた。他社のアイディアなど本当にあるのか,あっても品質や能力に満足できるかまったく当てにならない。”仕事を正しく片付けたいなら自分ですることだ”」

【オープンイノベーション
 これに対して,現代社会は社会のあらゆるところでイノベーションが生じうるのであり,大企業とはいえ社外との関係の中でイノベーションをはからざる得ない。それはスピンアウトであったり,社内に取り入れるものであったり,社外との関係を築きあげたりするものであったりする。知識は多様に分布し,情報はきわめて流動的であるという認識に基づいている。

「オープンイノベーションは,企業が社内外のアイディアを活用でき,市場への投入にも社内と社外の2つの経路があることを想定する。オープンイノベーションは,社内と社外のアイディアを結合して,ビジネスモデルで定義されるアーキテクチャやシステムを取り入れる。ビジネスモデルは,社内と社外の両方のアイディアから価値を創造するとともに,その価値の一部を回収するための内部メカニズムを定義する」