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№1396 灯油輸送のためのホースに製造物責任が認められた事例

№1396 灯油輸送のためのホースに製造物責任が認められた事例
 本件はフレキシブルメタルホースが破損して灯油が周囲に漏れた事例だ。原告は被告に対し3億6000万円ほど請求して,認容された(東京地裁H25.9.26判時2210号67頁)。

 フレキシブルメタルホースというのはチューブ部分を蛇腹状にすることによって曲げ,軸直角方向変位などの動きに対応する可動性を持つ。地震等による変位を吸収できる金属管である。

 本件では病院施設のための灯油輸送用に使用されたところ灯油が漏れ出して周辺の土地を汚染することになった。病院の建設を請け負った事業者は土地浄化のために多額の費用をかけることとなった。そうした損害が3億6000万円だというのである。

 この事件は灯油をポンプに流動する際に,振動が生じ,それが漏れの原因であるとされた。裁判所は製造物の欠陥について,燃料などの危険物を輸送するホースが1年3ヶ月で破損したものであるから,本件ホースは通常有するべき安全性を欠いているとした。

 本件では破損の原因についてかなり高度な立証がされている。こうした立証は中々専門家が関与しないとできない。原告企業が大企業であることがこのことを可能にしたかも知れない。しかし,製造物責任にいう「欠陥」は本来そうした厳密な科学的な立証は必ずしも必要とされていない。

 つまり,「欠陥」というのは,そのものが「通常備えるべき安全性を欠く」という状態だ。燃料ホースは1年3ヶ月では壊れない。燃料ホースは振動によって破損しない。といのが通常備えるべき安全性だ。原告側としてはそれを立証すれば足りる。

 なお,本件では振動に耐えるかどうかが争点となったが,被告において振動が生じる箇所においてはいけないといった説明をしたとか,禁止したりしたりする事情はないことも裁判所は指摘している。逆に製品に一定の危険が予想される場合には,その点をきちんと説明することで責任は免れる。