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№1384 元社員が顧客情報を盗み不正利用した事例(№3)

№1384 元社員が顧客情報を盗み不正利用した事例(№3)

 (前号より続く)
   №1 → http://blogs.yahoo.co.jp/lawyerkago/38580827.html  営業秘密とは
   №2 → http://blogs.yahoo.co.jp/lawyerkago/38581914.html  データを盗んだことの立証

 顧客情報を盗んだ社員とそれを利用した会社の責任に関する大阪地裁の判例を紹介している(大阪地裁H254.11判時94頁)。

【元社員と被告会社との関係の立証】
 顧客情報を盗んだ元社員を採用して,事業を開始した被告会社らは営業を差し止められた。この場合,元社員の盗んだ情報を被告会社が利用していたという事実の立証が難しい。被告会社は前から存在した顧客もいるし,新規に開拓したかもしれない。

 本件でやっかいなのは,被告A社会社は新たに被告B社会社を設立して,B社会社が顧客情報を不正情報を利用している点だ。つまり,情報の流れは次のようになる。
  被害企業 → 元社員 → A社会社 → B社会社

 こうした中で,B社会社の事業を差し止めるというのは普通に考えるとけっこう難しい。判例は次の事情から,B社会社の不正利用を認定した。

 ① B社会社の顧客名簿は,そのうちかなりの部分が盗まれた顧客名簿と一致していた。
 ② B社会社はA社会社と本店所在地もビルも同一であり,入り口は社名が併記されていた。
 ③ B社会社と共同しないとあり得ない事実が存在した。
 ④ B社会社の役員は実態としてA社会社と共同して活動していた。

 実際の紛争では責任を免れるためにいろいろ細工をすることが多い。特に不正行為がからんだ事件ではそうだ。
 弁護士の役割は法律構成もさることながら,こうした細工を見抜き,これを打ち砕くだけの立証を重ねることになる。しかし,これはかなり大変な作業だ。

 続く →