名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№1307 仕様書との相違、「保証の対象外」

№1307 仕様書との相違、「保証の対象外」
 ビジネス法務1月号は契約書の解釈をめぐるトラブルが紹介されている。その中で、部品が原因でトラブルが生じたが仕様書による保証の対象外と主張された事例を仮想の設問として解説してある。

 設問は自動車搭載の電子機器の業者が、スイッチを購入したところ、特定の条件下では機能しないことが判明して電子機器のクレーム処理を余儀なくされたという事例だ。

 仕様書は常温(5度~35度)、常湿(45%~85%)と呼ばれる通常温度、通常の湿度の標準状態で性能を保証するというものだ。

 事例では温度70度かつ湿度80%での状況かではスイッチに不具合が生じるということになった。メーカー側は常温でない状態では保証の範囲外であるという。

 ところが、仕様書には「使用周囲温度」、-30度~80度という文言が入っていた。使用周囲温度が80度以下であれば、湿度70%の条件下での性能は保証されているとも読める。

 このように技術者レベルで双方仕様書を詰めておいても契約上のトラブルは避けられない。このような事態に対して顧問弁護士はどのような指示をなすべきかというがこの論文のテーマだ。

 もちろん、顧問弁護士としては依頼者の利益になるように契約書を解釈することになる。その上で、非常温下であっても、「使用周囲温度」内であれば、湿度80%下でも性能を保証したものと解釈するべきであったとする材料を集めることになる。

 このような裁判所に有利な解釈を行ってもらうためには、有利な証拠を集める必要がある。たとえば、本件スイッチがいかなる条件下で利用されることが予定されていたかというの非常に重要な事情となる。自動車部品として、温度70度かつ湿度80%という過酷な条件が普通に起こりえるというのであれば、当方に有益な材料となる。

 そのため、弁護士としては関係者から詳しく事情を尋ねていき、有利な事情を積み重ねておくことになる。最終的にこうした事情をまとめあげることで、裁判に有利になるだけでなく、当事者間の交渉にとっても有利に展開することになる。